« 2008年7月 | トップページ | 2008年9月 »

2008年8月

2008年8月27日 (水)

「女にシッポがあった時」O.S.T.(エンニオ・モリコーネ)

Img_0001 東京出張の帰り、久々タワレコに寄ってみた。サントラコーナーをしばし物色。いつの間にやらイタリア映画(マカロニウエスタンを含む)サントラの日本盤が大量に並んでいて驚いた。あ、こんなの出てるよ、うわあこんなのも・・・。さんざん迷った挙句、エンニオ・モリコーネ先生の「女にシッポがあった時」を購入。指揮はお馴染みブルーノ・ニコライ、コーラスはアレッサンドロ・アレッサンドローニ(モリコーネ音楽で口笛やコーラスを数多く担当している名手)率いるイ・カントーリ・モデルーニ。「女にシッポがあった時」なんて聞いたこともない映画であるが、この完璧な布陣を見たら買わねばなるまい。帰りの新幹線で早速聴いてみた。

小柳帝氏の解説によると、本作は長らくブートレッグしか出ておらず、オリジナルのイタリア盤は数あるモリコーネ作品でも12を争うレア盤なのだという。早速聴いてみると「ミスター・ノーボディ」あたりに通じるほのぼの路線で、全編にフィーチャーされたアレサンドローニのコーラスワークも絶好調。[フィリーのカンカン]なんて凄げえお洒落! 辛い仕事のことを一瞬忘れられた。幸せ一杯のモリコーネ節にはつい口元がほころんでしまう。

「女にシッポがあった時」(1970年)は日本未公開のコメディ映画で、エロ味の強い「おかしなおかしな石器人」といった感じの映画らしい。主演はセンタ・バーガー、ジュリアーノ・ジェンマ。監督はパスカーレ・フェスタ・カンパニーレ。カンパニーレといえばフランコ・ネロ、コリンヌ・クレリー主演の不快なアクション映画「ヒッチハイク」(1976年)くらいしか見たこと無いが、「女性上位時代」(1968年)、「SEX発電」(1975年)といったフィルモグラフィーからして艶笑喜劇が得意な監督らしい。モリコーネ先生の素晴らしい音楽をバックに繰り広げられる原始人たちの艶笑喜劇・・・ううむ、いつか見てみたいぞ。ちなみに続編「女のシッポがとれた時」というのもあるらしい。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2008年8月24日 (日)

「スカイ・クロラ」(押井守)

シネコン仙台コロナワールドにて押井守監督の新作「スカイ・クロラ The Sky Crawlers見る。平和を実感させるためショーとして戦争が継続されている世界。思春期の姿のまま成長を止め、戦闘機のパイロットとして戦争に参加する「キルドレ」たちの運命を描く。

押井監督の前作「イノセンス」は思いっきり閉じた世界で好きになれなかったが、今回はテーマ・お話ともに明瞭で、ちょっと吹っ切れた印象を受けた。兵器や街の描写といった細やかなディティール描写、モノトーンで統一された色彩、無表情な登場人物たち、自己の存在について繰り返されるモノローグのような会話。押井守は得意の映像表現を存分に発揮しており、総体的な完成度から言えば「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」以来の高さと言ってさしつかえないであろう。映像のひんやりした感覚はとても好きだった。

原作(森博嗣)は未読なのでどれほど脚色されているかは分からないが、個人的な好みからいえば、ちょっとお話が薄いなあという印象を受けた。30分くらいで語りつくせるようなお話を無理に2時間に引き伸ばしたような感じというか。「実は・・・こうでした」というのはあくまで設定の説明であって、登場人物たちがそこ(運命)と対峙する様をこそもっと見たかった、と思うのだがいかがなものか。ここまでやれたんならもう一歩踏み込んで欲しかったと思うのだが、ないものねだりだろうか。

本作では「崖の上のポニョ」同様に、専門の声優以外のキャストが多く採用されている。違和感ばっかり覚えて困った「ポニョ」に比べると、菊地凛子、加瀬亮、谷原章介らはハマっていたと思う。特に、ボソボソした声ですぐに「何が?」「何で?」と繰り返す加瀬亮はなかなか良かったと思う。

しかし、観客は自分ら含めて5人しかいなかったけど大丈夫かねホント。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月23日 (土)

「ショートバス」(ジョン・キャメロン・ミッチェル)

 ジョン・キャメロン・ミッチェル監督「ショートバス」2006年)見る。N..のサロン「ショートバス」に集う様々な男女の赤裸々な愛の姿を描く。過激なセックス描写が話題となった作品で、確かにオナニー、ノーマルセックスからSM、ゲイセックス、乱交に至るまで様々なプレイが満載されている。とはいっても別にポルノ映画ではなくて、基本的には孤独な現代人の姿と、セックスを通じて開放されていく男女を描いた真面目な映画である。監督はこの題材に対し真剣に取り組んでおり、その真面目さは確かに伝わってきた。が、あまりのナイーブさにアホらしくてイライラさせられたというのが正直な感想。

 そもそも「ショートバス」という場所にしたところで要はかつてのヒッピーのコミューンからハッパを抜いてコミュニケーションの不毛に苦しむ孤独な現代人の悩みとN..のゲイカルチャーをまぶして一丁上がりてなもんで、ラブ&ピース、フリーセックスOKOK、だからって絶対に行ってみたいとは思えない場所であった。そこに集う登場人物はといえば、孤独なSMの女王、夫とのセックスでオーガズムに達したことがないという悩みを抱えるカウンセラー、三角関係に悩むゲイのカップル、とか何かこう凄く紋切り型な感じ。そいつらが夜な夜なサロンに集まってうじうじとありきたりな悩み(良く言えば普遍的な悩み)を吐露したりセックスしたりする、という訳で、登場人物の一人が「12歳の頃に探していたものを、僕はいまだに探してるんだ」などと思い入れたっぷりに告白する場面にいたっては「勝手に死ぬまで探してろ」と言いたくなるほどイラっときた。セックスを通じて開放されていく男女の姿を描くということにおいては、日本にはAVという優れたジャンルが存在している。人間洞察の深さ、映像的な面白さ、そしてもちろんエロにおいても、かつて目にした代々木忠監督やカンパニー松尾監督のAVの足元にも及ばないと思ったことであるよ。

 音楽はヨ・ラ・テンゴ。浮遊感のある音楽が印象に残る。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月22日 (金)

「機動警察パトレイバー THE MOVIE」(押井守)

新作に備えて予習の意味も込めて押井守監督「機動警察パトレイバー THE MOVIE(1989)見直してみた。人気オリジナル・ビデオ・シリーズから発展した劇場用長編。工事現場や警察で活躍する人型作業ロボット「レイバー」が暴走事故を繰り返す。事件の調査に当たった警視庁特車二課は、自殺した天才プログラマーの計画的犯罪であることを突き止めるが・・・。うん、やっぱり娯楽映画として普通に面白いじゃないか、これ。この辺から一気にリアル路線に向かう押井監督であるが、キャラクター演出にはまだいかにもアニメ的な誇張が見られるのが面白い。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月21日 (木)

「悪魔のシスター」(ブライアン・デ・パルマ)

ブライアン・デ・パルマ監督といえば、ある時期までは必ず「ヒッチコックの後継者」云々という文句とともに紹介されていた。確かに「愛のメモリー」(1976年)、「殺しのドレス」(1980年)、「ボディダブル」(1984年)など明らかにヒッチコックから霊感を得た作品が多い。個人的にはそんなに好きな監督ではなかったのだが、最近は何故だか見れば見るほど好きになる。今のハリウッド映画は猫も杓子もチャカチャカした落ち着きの無いデジタル編集が主流となってしまったが、デ・パルマお得意のスローモーション長廻しや丁寧なカット割りを見ると心底和む。ヒッチコックをもっと下品にして血糊を増やしたら、ユーロホラー(ジャッロ)に接近してしまった、というような世界にも心惹かれる。最近ではエルロイ原作の「ブラック・ダリア」(2006年)で堂々たるタッチを見せる一方で、「ファム・ファタール」 (2002)の思いっきり歪みまくった世界にも感動させられた。

そんなデ・パルマ監督の初期作品「悪魔のシスター」1973)を久々に見直してみた。リメイク版(「シスターズ」)が公開されるというので、近所のTSUTAYAに旧作が並んでいたのだ。

向かいのアパートで殺人が行われるのを目撃した女性記者(ジェニファー・ソルト)は単身調査を開始する。犯人(マーゴット・キダー)は元々シャム双生児で、切り離された姉の人格に操られて凶行を繰り返していた・・・。というお話。「切り離された美しいシャム双生児」というネタに、「サイコ」や「裏窓」みたいな見せ場をふんだんに盛り込んだ1作。画面分割、擬似記録フィルムなど「見せること」に耽溺したデ・パルマの演出にはニヤニヤさせられる。しかも音楽はヒッチコック作品常連のバーナード・ハーマンで、OPからテンションの高い楽曲で煽りまくる。雇われた探偵(チャールズ・ダーニング)がまだ調査を続けている・・・というラストショットが奇妙な余韻を残して秀逸。覗き見的な構図もデ・パルマらしく、「悪魔のシスター」を忘れられないものとしているのはこのラストショットのおかげと言っても過言ではないだろう。

ちなみにリメイク版で双子役を演じるのはルー・ドワイヨン。何とジャック・ドワイヨンとジェーン・バーキンの娘だという。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月18日 (月)

「マペットめざせブロードウェイ!」(フランク・オズ)

TV番組「セサミ・ストリート」に登場するカエルのカーミットは昔から好きなキャラクターだった。愛らしいデザイン、マペット特有の何ともいえない妙な動きには心奪われるものがあった。カーミットのオリジナルキャラクターは、ジム・ヘンソン(「ダーク・クリスタル」「ラビリンス/魔王の迷宮」等で有名なマペット師)が高校時代に母親の緑色のコートを材料に作ったものだという。

何年か前、夢にカーミットが出てきて二人で酒を酌み交わした。肩を組んで生ビールのジョッキを掲げて記念撮影をする場面で夢は終わったのだが、目覚めてからも本当にその写真が存在するのではないかと思うくらいリアルな楽しい夢であった。以来、自分の中でカーミット熱が再燃。玩具屋を通る度に、夢の中の写真を再現できる位大きなカーミット人形を売ってないか探している。

さて「マペットめざせブロードウェイ!」(1984)。監督のフランク・オズはジム・ヘンソン同様にマペット師出身で、「セサミ・ストリート」や「スターウォーズ」のヨーダの操演で有名。映画監督としてはリメイク版「リトルショップ・オブ・ホラーズ」 (1986)、「ビッグムービー」(1999)、「スコア」 (2001)といった佳作を手掛けている。「マペットめざせブロードウェイ!」(1984)はオズの単独監督デビュー作である。盟友ジム・ヘンソンは製作総指揮としてクレジットされている。

映画はカーミットやミス・ピギーらお馴染みのキャラクターたちがミュージカルでブロードウェイの舞台を目指すというお話。TV番組「セサミ・ストリート」は基本的にスタジオのセット撮影だが、本作はちゃんとした劇場用作品なので街頭のロケーションもふんだんに盛り込まれている。N..の大通りでマペットたちがひょこひょこ動き回るのが何ともいえずおかしい。カーミットは劇作家の役で、ほぼ主役。やっと公演が決まったら交通事故に遭って記憶喪失となり失踪、騒動に拍車をかける。映画としてはまあ子供向けの域を出ていないと思うが、ニコニコ楽しめた。和むよ。ブルック・シールズ、エリオット・グールド、アート・カーニーらがカメオ出演。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月17日 (日)

魚紳さん役は誰が?

お盆休みに帰省して、地元の広報を見ていたら「釣りキチ三平」実写版映画の記事が。調べてみたら滝田洋二郎監督、須賀健太、香椎由宇らの出演で来春公開だという。「釣りキチ三平」といえば原作者が郷土出身ということもあり子供の頃から馴染み深い漫画だ。願わくば「釣りバカ日誌」シリーズみたいな泥臭い観光映画ではなくて、映画史上初のハードコアな釣り映画になることを祈る。本気度からいえば「バカ」より「キチ」だろう、やっぱり。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2008年8月15日 (金)

「それぞれのシネマ~カンヌ国際映画祭60回記念製作映画~」(オムニバス)

2007年にカンヌ映画祭60回を記念して作られたオムニバス映画「それぞれのシネマ」見る。「映画館」をテーマに、著名な監督たちが3分間の短編で腕を競う。参加した監督陣はテオ・アンゲロプロス、オリヴィエ・アサイヤス、チェン・カイコー、マイケル・チミノ、ホウ・シャオシェン、アキ・カウリスマキ、クロード・ルルーシュ、ツァイ・ミンリャン、ヴィム・ヴェンダース、チャン・イーモウ、ウォン・カーウァイら多国籍の超豪華な面々。日本からは北野武が参加している。

3分間で起承転結のあるスッキリとした短編は意外に少なくて(もしやロマン・ポランスキー編くらいか)、中途半端な作品が多くて満腹感には至らずというのが正直な感想。とはいえ3分間にも関わらず監督の個性が伝わってくるのは事実で、映画ヲタとしては1作が終わる度にクレジットを見て「やっぱりこの人だったか」とニヤニヤするお楽しみはありだ。出てくる少年の顔つきを見ただけでガス・ヴァン・サント編だと分かったのはちょっと嫌だったが・・・。

テーマがテーマなんで仕方ないかもしれないが、毎度スクリーンを眺める観客の表情ばかり映し出されるのが辛かった。うっとりとスクリーンを眺める観客たちの表情は、「映画っていいものだ」と映画自身で自画自賛してるような感じがしてちょっと嫌だった。その一方、中にはマナーの悪い観客もいて、これには監督の意地悪さを感じたなあ。煙草吸ったり(北野武編ほか)、携帯カメラで撮影したり(アトム・エゴヤン編)、要らぬお喋りしたり(ラース・フォン・トリアー編)、トイレで自殺しようとしたり(デヴィッド・クローネンバーグ編)、チケット売り場に並んでから映画選び始めたり(ケン・ローチ編)・・・。個人的にはそんな自画自賛とも意地悪さとも無縁に、ひたすらマイペースで不穏な映像を繰り出すデヴィッド・リンチ編が好きだった。 

ちなみに本作はフェデリコ・フェリーニに捧げられている。映画館にやって来た親子連れが結局映画見ないでサッカーに行っちゃうケン・ローチ編を見て天国のフェリーニは苦笑いしてることであろう。 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月14日 (木)

「こわれゆく女」(ジョン・カサヴェテス)

ジョン・カサヴェテス監督「こわれゆく女」1974年)見る。上映時間145分の長尺で、愛し合っていながらお互い苦しめ合う中年夫婦の葛藤をじっくりと描く名作。「ぐるりのこと。」に続いて、崩壊夫婦再生映画の連続鑑賞だ。

何に対しても思いっきり空回る妻を演じるのはジーナ・ローランズ。もう冒頭からフルスロットルの情緒不安定ぶりで凄すぎる。夫が仕事仲間を招いて食事する場面のいたたまれない感覚はほとんど耐え難い程であった。対する夫を演じるのはピーター・フォーク。現場労働者で、仕事仲間に信頼も厚いその人柄が滲み出てくるような名演。周囲に対しては妻を必死に擁護し、しかし妻の錯乱には真っ先にキレてしまう混乱ぶりには胸を打たれる。ジーナ・ローランズとピーター・フォークは勿論だが、両親や子供たち、夫の仕事仲間など隅々の脇役にも演技を超えた生々しい存在感がある。カサヴェテス演出の凄さを改めて認識させられた。

映像的にはイマイチだった「ぐるりのこと。」に比べ、こちらは撮影(マイク・フェリス、デヴィッド・ノウェル)が実に力強い。手持ちカメラで切り取るフレームは、まるで夫婦喧嘩の現場に居合わせたがごとく臨場感に溢れている。自然光差し込む室内、工事現場の男たち、雨降りの街路などさりげない場面の映像も実に魅力的だ。

退院した妻を迎えて一悶着あった後、ようやく家族水入らずで平穏を取り戻す(かに見える)ラスト。ロバート・ワイアットみたいな感じの曲が流れて、夫婦が淡々と寝室のベッドを準備し始める簡潔なエンディングがとても良かった。泣けた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月13日 (水)

「ぐるりのこと。」(橋口亮輔)

 仙台桜井薬局セントラホールにて橋口亮輔監督「ぐるりのこと。」見る。子供を失ったことから精神的に不安定となる妻と、それを支える夫。約10年間に渡る一組の夫婦の紆余曲折を描くドラマ。加えて主人公を法廷画家に設定し、90年代の様々な事件(宮崎勤事件、地下鉄サリン事件など)を絡めて時代の空気までも描こうという大変な力作である。意余って力足りずか未消化な部分もあり、社会性の織り込み方はいささかわざとらしいと思う。周囲の登場人物が図式的なのも気になった。それでも最後までこの映画から目が離せなかったのは、ひとえに主人公となる夫婦のおかげである。

 飄々と毎日を乗り切っていく夫を演じるのはリリー・フランキー。音楽雑誌の隅っこにイラストを描いてた頃からお馴染みであるが、今や著名人の仲間入りを果たし、映画初主演。これが予想以上の好演であった。飄々とした存在感は素に近いと思われるが、自殺した父親について淡々と語る場面など実に上手いと思った。生真面目な性格の妻を演じるのは木村多江。煮詰まって「ちゃんとしたかった」のだと泣き崩れる場面はとてもリアルであった。ようやく活路を見出した終盤、短く切った髪型がとても良く似合っていた。

 夫婦間の会話が妙にリアルで、身につまされるというか何と言うか。情緒不安定に陥った妻に「どうして私といっしょにいるの?」「私のどこが好きなの?」などと詰め寄られて思わず口ごもってしまうリリー氏。愛してない訳じゃないんだ。でも、そんな時にスラスラ答えられるほど器用じゃないんだよ、と。途中からリリー氏演じる夫に思いっきり感情移入してしまったよ。ううむ。

 正直言って、情緒不安定な人物は大の苦手だ。映画は勿論、現実にも感情的になっている人を見ると思わず逃げ出したくなる。例えば職場で怒りまくってる人がいると、自分が悪くなくても(自分がその件と関係なくても)謝って何とかその場を収めようと考えて居ても立っても居られなくなる程だ。故に「ぐるりのこと。」はある意味針のムシロのような映画である訳だが、主人公夫婦の等身大な存在感のおかげで共感を持って見ることが出来た。

 上映時間 140分という長尺で、内容も重かったが、見て良かったと思う。これでもう少し映像的に冴えていたら・・・と思い残念だ。監督が映像には重きを置いていないのは分かるんだけど、あまりに映像が平坦で魅力に乏しいんだよなあ。これは本作に限らず最近の邦画に共通する問題点なのかもしれないが。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月10日 (日)

「映画崩壊前夜」(蓮實重彦)

蓮實重彦先生の最新評論集「映画崩壊前夜」読む。現在蓮實先生の評論がどれほど影響力を持つのか(そもそも映画評論なんてジャンルそのものが存在してるのか)不明だが、かつて彼の著作に衝撃を受けた一人としては興味深い一冊ではあった。蓮實先生といえば何しろハッタリの効いた文章を次々繰り出し全肯定もしくは全否定というメリハリの効いた評価が特色。今回は採り上げられているのは最近の公開作品が中心で、仰々しいタイトルの割にはフットワークの軽さが感じられるのが新鮮であった。黒沢清を強烈にプッシュしているのには同意するとして、個人的にショックだったのはトニー・スコットとマイケル・マンを推していること。トニー・スコットだよ? ううむ。でもそこまで言うなら見てみようかと思わすハッタリは健在なのであった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月 8日 (金)

♪僕のこと何も話さずに 僕のこと全部伝えたい

 妻から「登場人物がムーンライダーズの曲を歌うアニメがあるらしい」との話を聞いて、YouTubeを検索したら、出てきた出てきた。「魔法遣いに大切なこと~夏のソラ~」という番組で、YouTubeにアップされてたのは、ヒロイン(らしい)女の子が下北沢の町に降り立つと、街頭で弾き語ってる女性がアコギで「九月の海はクラゲの海」を歌い出す。ヒロインはその曲をバックに下北の町を歩き回る・・・という場面。背景は実写で、登場人物はアニメ。夕暮れみたいな色彩の映像はなかなかいい感じ。しかも曲がまた。凄くストレートに曲の良さが伝わってきて泣けた。オリジナル発売から実に22年目のカヴァーヴァージョン。シングルヒットとかしたら面白いんだけどな。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月 4日 (月)

「百万円と苦虫女」(タナダユキ)

仙台フォーラムにてタナダユキ監督の新作「百万円と苦虫女」見る。警察沙汰を起こして実家を飛び出したヒロイン鈴子(蒼井優)は、百万円を貯めては、海へ、山へと土地を転々と移り住むが・・・。

前作「赤い文化住宅の初子」は低予算の貧弱な映像が少々痛々しかったが、今回は蒼井優というスターを得て、実に堂々とした仕上がり。オリジナル脚本によるお話の面白さは勿論、キャラクター把握の的確さ、正攻法の演出が心強い。普通に面白い映画を見たという満足感があった。(そんな邦画、年に何本ある?)

ヒロインが百万円貯まる度に住処を変えていることを告白すると、バイト仲間の中島君(森山未來)は思わず「自分探しとか、そういうの?」と質問する。それに対して鈴子は「むしろ自分なんて探したくないし、自分が今ここにいるんだからそれが自分でしかないのだ」というような意味の事を答える。ここがこの映画の主眼であり、寡黙なヒロインが意を決して話すこの言葉はこの映画自体の意思表示なのだろうと思う。探すか、自分なんて。その意気や良し、である。

ヒロインが出会う男たち、植物に詳しい大学生の中島君(森山未來)、桃農家の息子(電気グルーヴのピエール瀧、素晴らしい好演!)、彼らがヒロインに対して示す好意を彼女が目にすることは無い。しかし映画がこの不器用な男たちの思いやりをきちんと救い上げるのが気持ち良く、タナダ監督の男性観を見るようで面白い、と言ったら言い過ぎか。古風な、というかむしろオヤジ趣味なのかもしれない。何しろ高田渡のドキュメンタリーを撮ったり、ムーンライダーズのメンバーをキャスティングしたりする女性だもんなあ。あ、そういえば映画の冒頭で、刑務所から娑婆に出たヒロインに「シャバダバ、シャバダバ・・・」(11PMのテーマ!)なんて口ずさませたりしてたっけ。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2008年8月 3日 (日)

「車のいろは空のいろ」(あまんきみこ)

図書館で童話「車のいろは空のいろ」(作 あまんきみこ、絵 北田卓史)を発見、懐かしくて借りてきた。「春のお客さん」「白いぼうし」「星のタクシー」の3冊。オリジナルは1968年頃の作品で、今回借りたのは2005年にポプラ社ポケット文庫から復刻されたもの。2000年にも一度ポプラ社から復刻されているようで、息の長い人気には驚かされる。実に何十年ぶりかで読み返してみた。

主人公はタクシーの運転手・松井五郎さん。松井さんのタクシーには様々な人や動物たちが乗ってきて、不思議な出来事に巻き込まれる・・・というお話。小学校の教科書に載っていた「しろいぼうし」は勿論、どれも大人の鑑賞にも堪えうるエピソードばかりでとても面白かった。見慣れたご近所や町並みに、様々な記憶や別の生き物の世界が潜んでいるという世界観が、タクシーの運転手という目線で自然に描かれている。これからもきっと読みつがれていくであろう。

タクシーの運転手として路線は熟知している筈の松井さんは、日常に突如出現した異空間や見知らぬ道筋に戸惑いながらも職務を全うする。童話なので優しい文体で描いているけれど、基本となっているのはタクシー運転手のリアルな仕事ぶりで、大人の目で見るとその辺がとても面白かった。酔っ払いを送って「今日は疲れたなあ」と漏らしたり、客待ちの間に一服したり、相手が動物だろうが何だろうが乗車拒否せず送り届け(しかもきちんと乗車賃は取る)、仕事を終えて会社で車の手入れをする場面まで描かれている。松井さんの仕事以外のパーソナリティーはほとんど描かれず、職務中での描写のみに絞られているのも面白い。

ちなみに、妻の弟は子供の頃、北田卓史さんに手紙を書いて返事をもらったことがあるそうだ。北田さんはタクシーが好きだから「卓史」というペンネームなんだという。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2008年8月 2日 (土)

追悼・赤塚不二夫

 ギャグ漫画界の巨人・赤塚不二夫が死んだ。それほど熱心な読者ではなかったけれど、子供の頃読んだ『おそ松くん』は今でも印象に残っている。時々番外編的に時代劇や、妙にスケールの大きな話があってそれが好きだった。赤塚の他の作品では、善悪のモラルが逆転した街が舞台の「ワルワルワールド」が印象深い。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年8月 1日 (金)

「赤い文化住宅の初子」(タナダユキ)

 ムーンライダーズの鈴木慶一がチョイ役で出演しているというので、タナダユキ監督「赤い文化住宅の初子」2007年)見る。原作は松田洋子の同名コミック。

 借金を抱えた父親は蒸発、母に先立たれ、兄と二人で文化住宅に暮らす中学生初子(東亜優)。家には電話も何もない貧乏暮らし。卒業後は好きな彼と一緒に東高に行こうと約束していたのに、貧乏のあまり就職を余儀なくされる・・・。

 冒頭はヒロイン(中学生の女の子)が「金、カネ、カネ、カネ・・・・」とつぶやきながら歩いている場面。町工場で働く兄貴が電気代使い込んで風俗嬢呼んだり、ヒロインが落ちてた10円拾ってネコババしたり、優しくしてくれたおばさんが宗教関係者だったり、しょうもない描写がてんこもり。なのだが、原作のミもフタもない筆致に比べるとかなり叙情に振り切った感じ。ヒロインに寄り添うように流れる音楽(担当は豊田道倫!)も優しい。ヒロインは「貧乏なんだけど元気で逞しく生きる少女」ではなくて、「あんまり喋らんから何を考えてるのかわからん」というような描き方をされてるのが面白い。短いエピソードを積み重ねていく手法が効果的で、タナダ監督の端正な演出力も感じるし、これでもう少し映像的な力があればなあと思う。せめてフィルム撮りで・・・と思うが。かなり低予算だったのだろうなあ。

 不幸なヒロインを演じる東亜優は生々しい存在感。松田洋子のキャラクターにしてはアホな感じが足りないという気もするが。脇では諏訪太朗(教師役)、佐倉萌(風俗嬢役)、大杉漣(父親役)ら黒沢清のVシネみたいな顔ぶれが楽しい。鈴木慶一は、ヒロインがバイトするラーメン屋の店主役。むっつりした嫌な感じの役で面白かった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年7月 | トップページ | 2008年9月 »