「イースタン・プロミス」(デヴィッド・クローネンバーグ)
劇場で見逃して悔しい思いをしていたクローネンバーグの最新作「イースタン・プロミス」(2007年)をようやくチェック。
舞台はロンドン。助産婦アンナ(ナオミ・ワッツ)は、出産後息を引き取ったロシア人少女の日記を手に入れる。残された赤ん坊の家族を探そうと調査を進める内に、ロシアン・マフィアが暗躍するロンドンのダークサイドに巻き込まれていく・・・。
ピーター・サシツキーによるひんやりとした撮影、ハワード・ショアの不穏な音楽。低体温な映像の手触りはまごうことなきクローネンバーグなんだが、いつになく端正な演出には驚かされた。「ビデオドロームに死を!」とかやってた監督と同じとは思えない正統的で肌理細やかな演出ぶり。ロンドンの裏社会とロシアン・マフィアの生態をリアルに描いて、正統派のギャング(というかヤクザ)映画としても見応えたっぷりだ。要所要所に繰り出される残酷描写の鮮やかさには惚れ惚れ。拳銃はほとんど出てこなくて、殺人はひたすら刃物という徹底振りも素晴らしい。
主演は「ヒストリー・オブ・バイオレンス」に続いてクローネンバーグ作品に連続登板のヴィゴ・モーテンセン。ヴィゴはクリストファー・ウォーケン、ジェームズ・ウッズ、ジェレミー・アイアンズ、ピーター・ウェラーらクローネンバーグ作品に主演する俳優の系譜に見事ハマっている。すなわち爬虫類系というか、頬骨が高く皮膚の薄そうな冷たい目をした男たち。本作の見所はズバリ、ヴィゴ・モーテンセンの佇まいであると言い切っても過言ではない位に魅力的である。サウナで刺客に襲われる場面ではチンコ丸出しで激しいアクションを披露。要所で見せる男気、さらにはヴァンサン・カッセルと漂わすホモセクシャルな妖しい雰囲気には誰しも目を奪われるであろう。「インディアンランナー」以来のファンとしては、凄い役者になったもんだなあと嬉しい限り。
ナオミ・ワッツはもちろん魅力的だけれど、ヴィゴをはじめとした男たちの存在感が際立っている。強大な父権に頭が上がらない二代目ヴァンサン・カッセルの情けなさ、ボスを演じるアーミン・ミューラー=スタールの穏やかな凄み。アンナの伯父を演じるのは、あれ、映画監督のイエジー・スコリモフスキーだよ。
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