SF・ファンタジー

2009年12月24日 (木)

「ロバと王女」(ジャック・ドゥミ)

 ジャック・ドゥミ監督「ロバと王女」(1970年)。シャルル・ペローの童話「ロバの皮」を映像化したミュージカル仕立てのファンタジー。

 CGの発達により隆盛を極める昨今のSF・ファンタジー映画に比べると、何とも大らかで素朴な映像が楽しい。これでいいんだよなあと思う。物語にしっかりした世界観があって、虚構の世界を血肉化できる存在感のある俳優がいて、後は監督に絵心があればちゃんと映画になるのだな。「ロシュフォールの恋人たち」でも感じた、何とも言えないドゥミのユルい感覚はここでも健在で、王様(コクトー作品の常連、ジャン・マレー)が大真面目な顔で白い猫?型の椅子に座ってる場面など思わず笑ってしまう。

 ミシェル・ルグランのミュージカル・ナンバーも美メロ揃いで良いし、何と言ってもカトリーヌ・ドヌーヴが光り輝いている。実はドヌーヴはあまり好きな女優ではないのだけれど、「ロバと王女」の彼女は素晴らしい。彼女の輝きが映画そのものの輝きと直結しているようだ。


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2009年12月 7日 (月)

「ハリー・ポッターと謎のプリンス」(デイビッド・イエーツ)

 ハリポシリーズ最新作「ハリー・ポッターと謎のプリンス」をレンタルでチェック。別にファンでもないんだからチェックする必要は無いじゃないかと思いつつ、ここまで見たんだから最後まで見てみようという義務感に囚われてつい借りてしまった。

 主人公たちと闇の帝王の闘いは激化し、もはや学園生活は危険極まりないものになっている。かと思えば今更のように恋のさや当てが始まったり、惚れ薬盛られて大騒ぎみたいなエピソードがあったり、一体何を見せたいんだというちぐはぐな感覚は相変わらず。

 さらに今回は映像が暗い。暗すぎる。いくら闇の帝王との闘いだからってあそこまで全編画面を真っ暗にしなくてもいいんじゃないかなあ。前作あたりからダーク・ファンタジー方向にシフトして、画調を暗めで統一しようという意気込みは感じるけど、あの物理的な暗さはいかがなものかと思う。あんな暗い学校とか暗い寮の部屋とかコウモリじゃないんだから暮らせないだろっての。

 後気になったのは、ハリーたちが飲酒する場面が出てくること。ハリーたちって一体何歳の設定なんだろうなあ。キスしたとか何とか大騒ぎしてるくらいだからまだ中学生くらいのような気もするのだが・・・。普段から怪しげな薬物が飛び交う学校なんだから、酒ぐらいでつべこべ言うなって言われそうだが。



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2009年10月19日 (月)

「空気人形」(是枝裕和)

 是枝裕和監督「空気人形」見る。仙台チネ・ラヴィータにて。

 ファミレスで働く冴えない中年男(板尾創路)のダッチワイフが「心」を持って自由に動き始める・・・などというお話を、一般の観客にも届くようにとの配慮だろうか、丁寧に丁寧に描いている。その丁寧さがいささか鬱陶しいというか、クドイような気がしたなあ。

 特に周囲の人間たちの生活を点描していく部分など、「テーマは現代人の孤独なのです」といわんばかりの絵に描いたようなステレオタイプな演出で、どうにも退屈に感じてしまった。

 粗筋を読んで「代用品」である人形が動き出して、本物の彼女になってくれたら・・・というモテない男の願望映画なのかと思いきや、映画は心を持った人形の側から描かれている。生まれたばかりの子供のような視点で町を歩き、人々と接し、世界を発見していく空気人形。東京下町のロケーションはいい雰囲気で、性行為(と後始末)を逃げず描いているのも良かった。粗筋から想像されるような、童貞オタク臭いファンタジーには堕していない。空気を吹き込む、というのを大きな見せ場として描いているのも面白かった。枝葉はすべて取り払って、空気人形を巡る三角関係の話に絞り込んでもよかったんじゃないかと思う。

 映画の最大の魅力は、ひとえに人形を演じるペ・ドゥナに尽きる。彼女は小動物系のルックスに反し、実はかなり根性の据わった演技派で、これまでも「復讐者に憐みを」や「グエムル」など汚れを厭わない体当たりの演技を披露してきた。今回は「心」を持ったダッチワイフという役柄につき、当然裸もありの難役なのだが、持ち前の愛くるしい存在感で完璧にこなしている。素晴らしい。

 「人形が心を持つ」お話というところで、金子修介のロマンポルノ「いたずらロリータ 後ろからバージン」、またはディズニーの「ピノキオ」などと見比べてみるのも一興かと思う。

 ・・・何か我ながら遠慮気味な文章になってしまった気がするなあ。何故だろう。ううむ。


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2009年4月 4日 (土)

「ウォッチメン」(ザック・スナイダー)

 話題の新作「ウォッチメン」WATCHMEN見る。仙台のシネコン、コロナワールドにて。気合入れて9:20からの初回に駆け込んだら、お客さんはたったの3人であった。

 時は1985年、ベトナム戦争に勝利し、いまだニクソン大統領が政権を握っているアメリカ。ソ連と続いている冷戦は、核戦争勃発を目前に緊張が最高潮に高まっていた。ヒーローの自警活動は法律で禁じられ、かつての正義の味方たちは引退の身。ある日、ヒーロー集団「ウォッチメン」の元メンバー、通称「コメディアン」が殺された。事件を不審に思った元同僚の「ロールシャッハ」は真相究明に乗り出すが・・・。

 これは期待以上に面白かった!監督は「ドーン・オブ・ザ・デッド」(2004年)のザック・スナイダー。さすがオタクらしく、あらゆる細部に溢れんばかりの愛情が注ぎ込まれており、見応えたっぷり。スローモーションを多用したキメの演出は見慣れてくると若干メリハリに欠けるきらいはあるものの、163分の長尺を飽きさせずにグイグイ引っ張る演出力はなかなかのもの。

 原作はコミック初のヒューゴー賞受賞という伝説的なグラフィック・ノベル(単なるアメコミとは違うのでそう呼ぶそうな)。ヒーローを投入したことでベトナム戦争に勝利したアメリカ、という恐ろしい設定が実に興味深い。そればかりかケネディ暗殺、キューバ危機といった60年代~70年代のアメリカに影を落とした事件の影にはスーパーヒーローたちの暗躍があり、もはや単なる「正義の味方」と呼べなくなったヒーローたちの活動は政府によって禁じられているという設定。この「活動を禁じられたヒーロー」「元ヒーローが次々襲われる」というストーリーでピンと来るのは、そう、ピクサーアニメ「Mr.インクレディブル」!あれの元ネタは「ウォッチメン」だったのだな。「ヒーローの存在意義」「正義とは何か」をとことん突き詰めていく徹底した姿勢はとても面白い。

 主人公「ロールシャッハ」はくたびれたトレンチコートにソフト帽という、まるで犯罪映画から抜け出してきたようなスタイルで、被ったマスクにはその名の通り怪しげな文様が蠢く。この顔の無い男がさながらハードボイルドの探偵のように謎を追って街を彷徨い、巨悪の陰謀と対決するという展開には燃える。卓越したヴィジュアルセンスで犯罪映画のルックを再現する前半部分、さすが「ゾンビ」のリメイクをものにしたザック・スナイダーらしい激烈なバイオレンス描写が満載された中盤の刑務所暴動あたりまでは最高に面白い。いかにもコミック原作のヒーローものらしい大風呂敷なヴジュアルが展開する終盤は、個人的にはちょっとついていけない感じもあったけど。ロールシャッハの男らしい最後と、バッドエンディングすれすれの終わり方には泣けた。

 どうも最近のハリウッド映画、特にアメコミ原作のヒーローものとなればハードロックというかデジロックみたいなやかましい曲が流れて、チャカチャカしたデジタル編集で見苦しい映像、という悪しき印象がある。そこにきて「ウォッチメン」はどうか。冒頭には意表を突いてボブ・ディランの某曲が流れ、偽のアメリカ史がモンタージュされる。クライマックスに至っては、(一番の盛り上げどころにラロ・シフリンによるテーマ曲が流れる「ミッション:インポッシブル」のように)ジミ・ヘンドリックスの某曲が鳴り響く!何かこれだけで全てOKのような気がしたなあ。さておき、これは必見作だ。

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2009年3月11日 (水)

「彗星に乗って」(カレル・ゼマン)

 チェコアニメの名匠カレル・ゼマンの実写映画「彗星に乗って」NA KOMETE(1970年)見る。大彗星が地球に接近し、天変地異によって街がそっくり彗星の上に飛ばされてしまった。彗星の上は恐竜がのし歩く原始の世界だった・・・。ジュール・ヴェルヌの原作を映画化したファンタジックな一編。

 ゼマンは実写画面とアニメーションを合成し、フィルターをかけた色彩処理でファンタジックな雰囲気を演出している。人形アニメで走り回る恐竜なんて、ハリーハウゼンの緻密さはないものの、何とも愛嬌があって楽しめる。CG以前の、「SFX」でもなく「特撮」でもなく、「トリック撮影」と呼ぶのが相応しい素朴な映像はとても楽しい。冒険映画として見ると、ユーモラスな味付けが過ぎていまひとつ盛り上がらないのだが。美女との妄想に耽った主人公が測量の仕事中に崖から落っこちたり、恐竜は金属のぶつかり合う音を嫌うと知った軍隊が棒の先に鍋やフライパンをくくりつけて「新兵器」と称したり、何ともユルいのだ。この大らかさを楽しめるかどうかが評価の分かれ目であろう。

 さておき、映画全体が放つロマンチックな雰囲気は何とも捨て難い。主人公が異国の市場で見つけた一枚の絵葉書、そこに描かれた絶世の美女が主人公を冒険の世界に導いていく・・・という導入部分の感覚は素晴らしい。

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2008年12月22日 (月)

「白い馬」(アルベール・ラモリス)

「赤い風船」のアルベール・ラモリス監督作品をもう1本。1953年のカンヌ映画祭でグランプリ、他にもジャン・ヴィゴ賞など受賞した名作「白い馬」1953年)。舞台は南仏の湿地帯。牧童たちから追われる白い荒馬と、漁師の少年の交流を描く瑞々しい短編。1時間足らずの短編だが、映画的としか言いようの無い充実しきった時間に満足満足。逃げる白馬と、追跡する牧童たちの疾走はまるで西部劇のごとく純粋なアクションの醍醐味を味合わせてくれる。モノクロームの映像もまた忘れ難い。

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2008年12月14日 (日)

「赤い風船」(アルベール・ラモリス)

アルベール・ラモリス監督「赤い風船」見る。1956年度カンヌ映画祭短篇グランプリ受賞作。少年が学校へ行く途中、街灯にひっかかっている赤い風船を開放したことから、少年と風船の交流が始まる・・・というファンタジックな作品。赤い風船は、小犬みたいに少年にどこまでもついてくる。そのいじらしさ。パリの街頭を捉えたカメラの生々しい臨場感。学校のいじめっ子たちが風船を割ろうと大挙して追いかけてくる場面の、路地を逃げ回る少年と暴徒と化したいじめっ子たちの追いかけっこの迫力。そしてラストの展開には仰天。いやーこれいいわ。珠玉の短編とは正にこれ。素晴らしい。

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2008年12月 7日 (日)

「ラスト、コーション」(アン・リー)「緯度0大作戦」(本多猪四郎)

何かちゃんと映画っぽい映画(ってのも変な言い方だが)を見たくて、アン・リー監督「ラスト、コーション」(2007)をレンタル。

第二次大戦中、日本軍占領下の上海が舞台。抗日運動に身を投じたヒロイン(タン・ウェイ)は、日本軍に協力する特務機関のリーダー(トニー・レオン)を暗殺する為に色仕掛けで近づいていくが・・・。

何か違うなあこれ。歴史ドラマなのかサスペンスなのか人間ドラマなのかエロ映画なのかどっちつかずの作りがもったいない。もっと濃厚な映画かと期待してたらちょっと薄味だったなあ。ヒロインの丸顔がどうもお話にそぐわない気がした。美術や音楽などいかにも映画っぽい画面作りは期待通りだったし、何しろご贔屓のトニー・レオン主演なので最後まで楽しめたのではあるが。良かったのはラスト。抗日運動のレジスタンスたちが処刑される(であろう)暗闇の絶望的な深さ、あのクレーンショット故に嫌いになれない映画ではある。

 続けて、往年の東宝特撮映画「緯度0大作戦」(1969)見る。監督本多猪四郎、音楽伊福部昭、特技監督円谷英二とお馴染みのスタッフ。日米合作なのでジョセフ・コットン、宝田明、岡田真澄、リチャード・ジャッケルら日米混合キャスト。ジョセフ・コットンの吹き替えが納谷悟朗というのも楽しい。リチャード・ジャッケルは「特攻大作戦」とかオルドリッチ作品で見かけた顔だ。

 海底に作られた平和な理想郷「緯度0」を守る潜水艦アルファー号の艦長(ジョセフ・コットン)と、理想郷を狙う悪の博士の攻防を描く。本多監督の東宝特撮映画の中では決して出来のいい方ではないと思うが、怪獣映画ではなくてSF映画寄りの作りになっているのが新鮮であった。何故か女医さんがビキニ姿だったり、アダルトテイストも少々。潜水艦の海中戦はトクサツ好きにはこたえられない見せ場であった。まあまあ。

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2008年10月16日 (木)

「ベオウルフ/呪われし勇者」(ロバート・ゼメキス)

 ロバート・ゼメキス監督「ベオウルフ/呪われし勇者」見る。剣と魔法の世界を舞台に、勇者ベオウルフが怪物と戦い国を治めるヒロイックファンタジー。映像は前作「ポーラー・エクスプレス」同様に、レイ・ウィンストン、アンソニー・ホプキンス、ジョン・マルコヴィッチ、ブレンダン・グリーソンら俳優たちの演技に、CG処理を施したもの。アクション場面ではかなり残虐でドギツい見せ場が連続、戦士たちが交わすエロ話や、メインとなる「父親たちの罪」のエピソードなどを見てもゼメキスとしてはオトナ向けに仕上げたかったのだろう。が、スケール感に乏しい息苦しい雰囲気と、CG処理した映像の妙につるりとした質感に馴染めず、どうにもキモチ悪い映画だったなあ。ベオウルフが全裸で怪物と戦う場面やクライマックスの竜との戦いなど本来力感に溢れたアクション場面になりそうなものを、CG映像のせいでゲームのデモ画面(もしくは「シュレック」)みたい。CG画面に慣れたゲーム世代にヒロイックファンタジー本来の魅力を伝えようという意図でもあったのかなあ。ゼメキスの思惑はともかくとして、映像と内容がアンバランスというか、これなら普通に実写でいいじゃんと思った。

 主人公ベオウルフ(レイ・ウィンストン)はすぐにマッパになるマッチョ系で、勇者というよりも自慢話の好きな誇大妄想狂のようだ。実は人間的な弱さを併せ持ったキャラクターという設定(怪物の母親アンジェリーナ・ジョリーに誘惑されてそのことを王妃に告白できずにいる)もわかるが、どうにも感情移入不能で参った。前半に出てくる泣き叫ぶ怪物役はクリスピン・グローヴァー。王妃役のロビン・ライト・ペンは明らかに本人の方が美人だよ。アンジェリーナ・ジョリーはそのまんま。いいのか、あんなんで。

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2008年6月23日 (月)

「インベージョン」(オリヴァー・ヒルシュビーゲル)

 ジャック・フィニイ「盗まれた街」、4度目の映画化「インベージョン」見る。ドン・シーゲル版、フィリップ・カウフマン版、アベル・フェラーラ版、どれも面白かったが、2007年度の最新作はどんなものかと期待。監督はドイツ人のオリヴァー・ヒルシュビーゲル。

 物語はオリジナル通り。まあまあ面白いんだけど、新解釈が無いのが辛い。ボディスナッチャーの支配から解き放たれたら、相変わらず戦争だテロだと元の状態に戻る・・・というのがラストで、争いを起こすことこそが人間らしさであるという皮肉を込めたつもりだろうが別に今さら驚きもない。脇役でカウフマン版にも出ていたヴェロニカ・カートライトが出てるのと、ちょっと変わった顔つきの子役が可愛かったのがチェックポイントか。さておきこの映画の見所はニコール・キッドマンに尽きるわけで、彼女はこういう硬質のピリピリした役が妙にハマるのだな。たいそう魅力的であった。スケスケの寝巻き姿でファンサービスも抜かりない。

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