話題の新作「ウォッチメン」WATCHMEN見る。仙台のシネコン、コロナワールドにて。気合入れて9:20からの初回に駆け込んだら、お客さんはたったの3人であった。
時は1985年、ベトナム戦争に勝利し、いまだニクソン大統領が政権を握っているアメリカ。ソ連と続いている冷戦は、核戦争勃発を目前に緊張が最高潮に高まっていた。ヒーローの自警活動は法律で禁じられ、かつての正義の味方たちは引退の身。ある日、ヒーロー集団「ウォッチメン」の元メンバー、通称「コメディアン」が殺された。事件を不審に思った元同僚の「ロールシャッハ」は真相究明に乗り出すが・・・。
これは期待以上に面白かった!監督は「ドーン・オブ・ザ・デッド」(2004年)のザック・スナイダー。さすがオタクらしく、あらゆる細部に溢れんばかりの愛情が注ぎ込まれており、見応えたっぷり。スローモーションを多用したキメの演出は見慣れてくると若干メリハリに欠けるきらいはあるものの、163分の長尺を飽きさせずにグイグイ引っ張る演出力はなかなかのもの。
原作はコミック初のヒューゴー賞受賞という伝説的なグラフィック・ノベル(単なるアメコミとは違うのでそう呼ぶそうな)。ヒーローを投入したことでベトナム戦争に勝利したアメリカ、という恐ろしい設定が実に興味深い。そればかりかケネディ暗殺、キューバ危機といった60年代~70年代のアメリカに影を落とした事件の影にはスーパーヒーローたちの暗躍があり、もはや単なる「正義の味方」と呼べなくなったヒーローたちの活動は政府によって禁じられているという設定。この「活動を禁じられたヒーロー」「元ヒーローが次々襲われる」というストーリーでピンと来るのは、そう、ピクサーアニメ「Mr.インクレディブル」!あれの元ネタは「ウォッチメン」だったのだな。「ヒーローの存在意義」「正義とは何か」をとことん突き詰めていく徹底した姿勢はとても面白い。
主人公「ロールシャッハ」はくたびれたトレンチコートにソフト帽という、まるで犯罪映画から抜け出してきたようなスタイルで、被ったマスクにはその名の通り怪しげな文様が蠢く。この顔の無い男がさながらハードボイルドの探偵のように謎を追って街を彷徨い、巨悪の陰謀と対決するという展開には燃える。卓越したヴィジュアルセンスで犯罪映画のルックを再現する前半部分、さすが「ゾンビ」のリメイクをものにしたザック・スナイダーらしい激烈なバイオレンス描写が満載された中盤の刑務所暴動あたりまでは最高に面白い。いかにもコミック原作のヒーローものらしい大風呂敷なヴジュアルが展開する終盤は、個人的にはちょっとついていけない感じもあったけど。ロールシャッハの男らしい最後と、バッドエンディングすれすれの終わり方には泣けた。
どうも最近のハリウッド映画、特にアメコミ原作のヒーローものとなればハードロックというかデジロックみたいなやかましい曲が流れて、チャカチャカしたデジタル編集で見苦しい映像、という悪しき印象がある。そこにきて「ウォッチメン」はどうか。冒頭には意表を突いてボブ・ディランの某曲が流れ、偽のアメリカ史がモンタージュされる。クライマックスに至っては、(一番の盛り上げどころにラロ・シフリンによるテーマ曲が流れる「ミッション:インポッシブル」のように)ジミ・ヘンドリックスの某曲が鳴り響く!何かこれだけで全てOKのような気がしたなあ。さておき、これは必見作だ。
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