ホラー

2009年12月12日 (土)

「炎のいけにえ」(アルマンド・クリスピーノ)

 大分前に前半だけ見て放ってあったアルマンド・クリスピーノ監督「炎のいけにえ」(1974年)をようやく見終えた。

 映画の始まりは、めらめらと燃え上がる太陽のプロミネンスと数パターンの自殺場面のカットバック。カミソリで手首を切る女、車に火を放ち焼け死ぬ男、袋をかぶり川に飛び込む男、自動小銃による父娘の無理心中・・・。バックに流れるのはエンニオ・モリコーネ先生によるアバンギャルドなBGM。女性の怯えた呻き声を巧みに使った楽曲が不穏な雰囲気を盛り上げる。この異様な冒頭場面で一気に期待は盛り上がったのだが・・・。

 舞台は猛暑のローマ。自殺が多発し、次々変死体が運び込まれるので検死医シモーナ(ミムジー・ファーマー)はノイローゼ気味。折から、父親の愛人が死体で発見され、それからシモーナの周囲で次々と殺人事件が起きる・・・。

 冒頭の映像から何やらオカルト映画なのかと期待したら大外れで、実際は犯人探しのミステリー仕立て。猟奇殺人の描写、ヒロインが見る幻想場面、そして犯人探しの謎解き、それらがてんでバラバラで噛み合わず、映画としては何が何やらさっぱり要領を得ない。今更ユーロホラーに本格推理やお話の辻褄など期待しちゃいないけど、これはちょっとお粗末過ぎるなあと。残酷描写も何だか汚いばかりで、ユーロホラー特有の優雅さに欠ける。結果、モリコーネ先生の音楽ばかりが突出しているという残念な映画であった。


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2009年11月14日 (土)

「スペル」(サム・ライミ)

 シネコンのレイトショーで映画鑑賞。MJファンの妻は特別公開の「ムーンウォーカー」へ、自分はサム・ライミの新作「スペル」へ。 

 銀行の融資係クリスティーン(アリソン・ローマン)は、不気味な老婆(ローバ・レイヴァー)から受けた不動産ローンの返済期限延長を断ったことから逆恨みされ、呪いをかけられる。ラミアという悪霊が3日間被害者を悩ました後、魂を奪いにやってくるのだという・・・。

 「スパイダーマン」シリーズでメジャー路線を極める前、「死霊のはらわた」三部作でマニア御用達のホラー監督だった頃のライミは、エキセントリックなカメラワークに代表される技巧派の印象があった。今回は極めて解りやすいお話と感情移入しやすい登場人物、道徳的な教訓話とも受け取れるテーマ、など一般向け観客にも十分アピール出来るような仕上がり。

 とはいってもそこはライミ。元気すぎる死霊(今回は婆さん)が暴れまくり、ヒロインと格闘を繰り広げる場面などほとんどスラップスティック調。行きすぎた恐怖演出が笑いに転化する感覚は、25年来変わらぬライミ節で嬉しくなる。思えば、ライミとは第1作「死霊のはらわた」(1983年)を見て以来のお付き合い。近所のレンタル屋に原題のまま置いてあったっけ。高校時代の我々はあれ見て「ようやるわ!」と大喜びしたものだった。

 最初と最後にドーン!と景気良くタイトル(原題は「私を地獄に引きずり込んで」)が出る辺りにライミの本気さを感じて嬉しかったなあ。そういえば、効果音や音楽がやけにデカいのがおかしかった。


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2009年10月26日 (月)

「吸血鬼」(ロマン・ポランスキー)

 ロマン・ポランスキー監督が、30年も前の淫行事件の為、映画祭で訪れたスイスで当局に身柄を拘束されたという。米政府からは身柄をアメリカに移送するよう正式に要請があったようだ。ポランスキーはもう70代半ばのはず。実刑判決を食らったりしたら獄中で死を迎えたりすることになるのだろうか。

 ポランスキーは戦時中に母親をアウシュビッツ捕虜収容所で失い、妻シャロン・テートはマンソン・ファミリーに惨殺された。自らも未成年との淫行容疑で国外に逃亡、「戦場のピアニスト」でオスカーを受賞した時には逮捕される恐れがあると授賞式には参加せず・・・。映画監督としての評価とは別に、常にスキャンダラスな私生活が話題になるポランスキー。このままでは絵に描いたような幕切れを迎えそうだなあ。

 件のニュースをネットで知って、何かポランスキーの映画が見たくなったので久しぶりに「吸血鬼」(1967年)を見直してみた。いやあ面白かったなあ。「反撥」「ローズマリーの赤ちゃん」「テナント」などのヒリヒリするような異常神経はないが、映画マニアとしてのポランスキーのジャンル愛が炸裂した愉快な1作である。

 「吸血鬼」はドラキュラ映画のパロディ。有名なMGMのタイトルがアニメーションに変わり、血がしたたり落ちるオープニングからニヤニヤさせられる。吸血鬼ハンターのじいさんのボケっぷり、若きポランスキーがホモの吸血鬼に追いかけられてドタバタ走り回るスラップスティックな見せ場も楽しい。

 この映画の良いところは、単なるおふざけに終わらず、怖い場面はきっちりと怖く撮られていることだ。墓場から死人がぞろぞろ出てくる場面や吸血鬼の舞踏会の異様な雰囲気。寂れた宿屋、丘の上にそそり立つ古城など美術も完璧。映像は怪奇映画ならではムードが満喫出来る本格派だ。そうそう、雪が降ってるのもファンタジックな雰囲気を盛り上げていた。

 ヒロインを演じているのがシャロン・テート。何故かお風呂好きという設定で、しょっちゅうお風呂に入っている(ドラえもんのしずかちゃんか!)のがおかしい。後半、舞踏会の場面では真っ赤なドレスに身を包み、ポランスキーのフェティッシュな視線を一身に受けたような、輝くばかりの美しさ。


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2009年10月25日 (日)

「悪魔の虚像/ドッペルゲンガー」(ベイジル・ディアデン)

 ベイジル・ディアデン監督「悪魔の虚像/ドッペルゲンガー」(1970年)見る。某家電量販店の中古販売コーナーで購入したDVD。

 規則正しい生活を重要視する堅物のビジネスマン、ペルハム(ロジャー・ムーア)は自動車事故で瀕死の重傷を負う。奇跡的に一命を取り留めて、無事会社にも復帰するが、身に覚えのない事に巻き込まれ始める。どうやらもうひとりのペルハム氏がいて、彼の人生を乗っ取ろうとしているようだ・・・。

 原作はアンソニー・アームストロングという人の短編小説で、TV「ヒッチコック劇場」でも映像化されているのだそうだ。主人公を演じているのはジェームズ・ボンド役で有名になる直前のロジャー・ムーア。

 真面目で保守的な自分とは正反対の、もうひとりの自分。大胆な裏工作で商談を成功させ、ギャンブルに強く、セックスも得意な・・・。古典的な題材だけれど、もうひとりの自分の存在を主人公の妄想ではなくて、本当に居るものとして描いているところが面白かった。もうひとりの自分と対面するクライマックスは盛り上がる。映像は地味ながら意外に凝っていて、冒頭と終盤、2度描かれる交通事故場面のシャープな編集、デ・パルマばりに回転するカメラ、マッチやネクタイなど小道具の効果的な使用など、映像的な見せ場は多い。

 題材からいってきっと好みの映画だろうと予想して買ったのだが、見事に大当たり。これは拾い物だった。「存在不安」テーマの秀作として忘れられない1本になりそうだ。89分という短い上映所間もちょうど良い。イギリス映画なので、ロンドンの街並みやファッションも意外に新鮮だった。

 黒沢清「ドッペルゲンガー」、ルイ・マル「影を殺した男」(「世にも怪奇な物語」)などと見比べてみると面白いかも。あ、それより根岸吉太郎「永遠の1/2」(佐藤正午原作)がいいかもなあ。あれももうひとりの自分に翻弄される話だった。ホラーじゃないけど。


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「サスペリア・テルザ 最後の魔女」(ダリオ・アルジェント)

 ダリオ・アルジェント監督の「サスペリア・テルザ 最後の魔女」(2007年)。「サスペリア」「インフェルノ」に続くアルジェントの「魔女3部作」完結編。劇場で見て、今回DVDで2度目の鑑賞。

 禍の3母神とされる魔女たちの3人目、最強にして最後の魔女「涙の母」が甦り、ローマに恐怖をもたらす・・・というお話。

 オカルト映画というよりはスラッシャー映画みたいな感じで、ひたすら派手に残酷描写が繰り出されるだけのアメリカンな仕上がり。イタリアン・ホラーらしいムーディーな良さは皆無。今回見直しても印象は変わらなかった。恐怖描写に全然タメがないのだな。これだからアホジェントはよう、と言いたくなるお粗末な映画だと思う。とは言え、今時おっぱいも内臓も血糊も出し惜しみしない姿勢は立派だと思う。ヒロインが汚水まみれになるお約束の場面も盛り込まれている。サービス精神は豊富なんで、それなりに楽しんで見てしまった。

 主演のアーシア・アルジェントはますます父親に似てきたような気がするなあ。恐怖におののく彼女の顔の方が魔女より怖いぞ。脇役でウド・キアーやフィリップ・ルノワなんかが顔を見せるのは楽しかった。

 監督は父ダリオ、プロデューサーは弟クラウディオ、主演は娘アーシア、さらに元妻(アーシアの母親)ダリア・ニコロディが共演、という家族ぐるみの製作体制がイタリア映画っぽい。家族ぐるみっていっても内容がこれだもんなあ。ようやるわい。音楽はアルジェント作品常連、元ゴブリンのクラウディオ・シモネッティ。


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2009年4月11日 (土)

「ハロウィン」(ロブ・ゾンビ)

 ジョン・カーペンター監督のカルト・クラシックをロブ・ゾンビ監督がリメイクした「ハロウィン」HALLOWEEN(2007年)見る。

 アメリカの田舎町に暮らすマイケル・マイヤーズ少年(ダエグ・フェアーク)。両親の仲は悪く、学校ではいじめられ、孤独な毎日を送っていた。そしてハロウィンの夜、ついにマイケルは幼い妹を残して一家を惨殺、精神病院に収監され、ドクター・ルーミス(マルコム・マクドウェル)の治療を受け始める。それから17年後、巨漢に成長したマイケルは病院を脱走し、殺人を繰り返しながら、妹の元へと向かうのだが・・・。

 ロブ・ゾンビ監督のこれまでの作品を振り返るならば、「マーダー・ライドショー」はまるで「悪魔のいけにえ2」の再現、「デビルズ・リジェクト」は「ナチュラル・ボーン・キラーズ」の本来あるべき姿を示し、「ナチ親衛隊の狼女」(「グラインドハウス」収録のフェイク予告編)は即トラッシュマウンテン・レーベルから発売されそうな映像を提示、とマニアを裏切らない仕事ぶりであった。今回は「ハロウィン」のリメイクということで、実にストレートなスラッシャーものに仕上がっている。これをして地味だ、新鮮味が無いと批判する向きもあろうが、いやいや俺は好きだったなあ。転がる死体一つ流れる血のどす黒い色彩一つとっても正統的なホラー演出を心得た撮り方だし、後半のたたみかけるようなアップテンポの演出もまた面白い。ロブ・ゾンビの溢れんばかりのホラー映画愛が横溢した好篇だと思う。

 チョイ役まで含めてキャスティングがマニアックだ。カーペンター版でドナルド・プレザンスが演じたドクター・ルーミスはマルコム・マクドウェル。マイケルの義父はウィリアム・フォーサイス(「デビルズ・リジェクト」)、保安官はブラッド・ドゥーリフ(「スポンティニアス・コンバッション」)、看護婦はシビル・ダニング(「ハウリング2」)、精神病院の経営者はウド・キア(「悪魔のはらわた」)、看守はダニー・トレホ、墓守役はビル・モーズリー(「悪魔のいけにえ2」)、マイケルの犠牲となるトラック運転手ビッグ・ジョー・グリズリーはケン・フォーリー(「ゾンビ」)、その他ディー・ウォーレス(「クジョー」)、シド・ヘイグ(「スパイダー・ベイビー」)、クリント・ハワード(「デビル・スピーク」)、リチャード・リンチ(「ディーモン/悪魔の受精卵」)など、ホラー映画出演歴のある錚々たる顔ぶれが揃っている。彼らは映画に何ともいえないBクラスならではの荒みというか凄みを吹き込んでいる。マイケルの母親役は監督の女房シェリ・ムーン・ゾンビ。しっかりした演技力といい女っぷりを見せてくれる。

 リメイク版の最重要ポイントは、マイケルの少年時代を描いていることだろう。マイケルは絵に描いたようなホワイトトラッシュの出身(母親はストリッパー、義父は酒びたりのろくでなし、姉貴はあばずれ)で、学校ではいじめられっこで・・・という。殺人鬼の生い立ちを描けば描くほど怖くなくなるというホラー映画のタブーがあり、この映画は正にそのタブーを犯している訳だ。しかし監督の主眼は正にこの前半部分にあったような気がする。というのも映画はこのマイケルに肩入れして描いているように見えるからだ。マイケルの少年時代を演じた子役が凄い存在感で、怪物化した後のマイケルを予感させるのも良かった。浮腫んだような頬、パサパサした金髪、空虚な目つき・・・。映画はマイケル少年の暗い欲望と同化し、殴り、刺し、幼い妹を抱きしめるのだ。監督の目線がマイケルに注がれているのが明らかになるのはエンディング。そこに流れるのは幼いマイケルと母親が戯れる様子を映し出すホームムービー(8ミリ!)。母親が自殺する寸前に見ていた映像でもある。今回のリメイク版がこのテのありがちで単細胞なスラッシャー・ムービーと一線を画しているのは、監督が独自の視点でマイケルに愛情を注いで描いているからではないかと思う。今回もまたゾンビの名に恥じない立派な仕事ぶりだったと言えよう。

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2008年10月17日 (金)

「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(ティム・バートン)

劇場で見逃したティム・バートン監督「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」2007年)ようやく見る。トニー賞受賞のブロードウェイミュージカルを完全映画化。と聞くとティム・バートンが何で?という感じだが、そこは霧に煙るロンドンが舞台、剃刀で喉を裂く殺人理髪師と死体でパイを焼く中年女が主人公とくれば納得の起用であろう。

無実の罪で投獄させられ、妻子を奪われた理髪師ベンジャミン・バーカー(ジョニー・デップ)。15年後、街に戻ったベンジャミンは「スウィーニー・トッド」と名を変え、自分を陥れたタービン判事(アラン・リックマン)への復讐を開始する・・・。

大スター、ジョニー・デップが主演するハリウッド・メジャーのミュージカル大作、にも関わらずこの暗い映像、てんこ盛りのスプラッター描写には感心した。ジョニー・デップ&ヘレナ・ボナム・カーターの目の下にクマカップルがいかにもバートン映画らしい。ちゃんとホラー映画なのだからして、当然のようにバッドエンディングなのにも納得。ミュージカルとしては、それほど印象に残るキャッチーな曲が無いと思ったが。充分楽しんだのではあるが、バートンにしてはやけに堂々とした演出でかえって落ち着かない感じがしたなあ。

ちなみに、同じ題材でジョン・シュレシンジャー監督「スウィーニー・トッド」(1997年)というのもある。主演はベン・キングズレー(「ガンジー」)。未見だけど、こっちはもっと陰気そうだなあ。

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2008年9月23日 (火)

「ミスト」(フランク・ダラボン)

 劇場で見逃して悔しい思いをしていたフランク・ダラボン監督「ミスト」2007年)をようやくDVDでチェック。街を霧が包み込み、その中には奇怪な怪物たちがうごめく。スーパーマーケットに篭城した人々の運命は・・・というお話。原作はスティーヴン・キングの傑作中篇「霧」。封切当時劇場で見た映画仲間の評価も高く、期待していた。

 思うに、キングの魅力は、吸血鬼だの幽霊だの地下に潜む怪物だの手垢にまみれた材料から、登場人物たちの機智と行動力を巧みに描写して崇高な感動をもたらすところにあると思う。さすがキングの映像化には一日の長があるダラボンだけに、その精神に忠実に、とても見応えのある映画に仕上がっている。往年の怪獣映画みたいなB級テイスト(「舞台をほぼスーパーマーケットに限定」「怪物がなかなか姿を見せない」「時々姿を見せる怪物がどことなくハリボテっぽい」)を巧みに残してあるのがニクい。ゴア描写も容赦なく、原作を一歩進めた真っ暗な幕切れにも納得。やっぱりホラーはバッドエンディングに限るよ。音楽が終わったら延々戦車の走る地響きやヘリコプターの音だけが聞こえるエンドロールも不安を煽ってなかなか。いやあ面白かった。・・・んだが、こっちの心が弱ってるせいか、映画の迫力に負けて少々胃がもたれたのも事実。(確か「グリード」見た時もそうだったような) 大いに楽しみつつも、鑑賞後には本気で暗い気分に落ち込んでしまった・・・。

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2008年8月21日 (木)

「悪魔のシスター」(ブライアン・デ・パルマ)

ブライアン・デ・パルマ監督といえば、ある時期までは必ず「ヒッチコックの後継者」云々という文句とともに紹介されていた。確かに「愛のメモリー」(1976年)、「殺しのドレス」(1980年)、「ボディダブル」(1984年)など明らかにヒッチコックから霊感を得た作品が多い。個人的にはそんなに好きな監督ではなかったのだが、最近は何故だか見れば見るほど好きになる。今のハリウッド映画は猫も杓子もチャカチャカした落ち着きの無いデジタル編集が主流となってしまったが、デ・パルマお得意のスローモーション長廻しや丁寧なカット割りを見ると心底和む。ヒッチコックをもっと下品にして血糊を増やしたら、ユーロホラー(ジャッロ)に接近してしまった、というような世界にも心惹かれる。最近ではエルロイ原作の「ブラック・ダリア」(2006年)で堂々たるタッチを見せる一方で、「ファム・ファタール」 (2002)の思いっきり歪みまくった世界にも感動させられた。

そんなデ・パルマ監督の初期作品「悪魔のシスター」1973)を久々に見直してみた。リメイク版(「シスターズ」)が公開されるというので、近所のTSUTAYAに旧作が並んでいたのだ。

向かいのアパートで殺人が行われるのを目撃した女性記者(ジェニファー・ソルト)は単身調査を開始する。犯人(マーゴット・キダー)は元々シャム双生児で、切り離された姉の人格に操られて凶行を繰り返していた・・・。というお話。「切り離された美しいシャム双生児」というネタに、「サイコ」や「裏窓」みたいな見せ場をふんだんに盛り込んだ1作。画面分割、擬似記録フィルムなど「見せること」に耽溺したデ・パルマの演出にはニヤニヤさせられる。しかも音楽はヒッチコック作品常連のバーナード・ハーマンで、OPからテンションの高い楽曲で煽りまくる。雇われた探偵(チャールズ・ダーニング)がまだ調査を続けている・・・というラストショットが奇妙な余韻を残して秀逸。覗き見的な構図もデ・パルマらしく、「悪魔のシスター」を忘れられないものとしているのはこのラストショットのおかげと言っても過言ではないだろう。

ちなみにリメイク版で双子役を演じるのはルー・ドワイヨン。何とジャック・ドワイヨンとジェーン・バーキンの娘だという。

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2008年7月23日 (水)

「罰ゲーム」(ウィリアム・ディア)

クリスピン・グローヴァー出演作、続いて「罰ゲーム」(2006)をチェック。日本劇場未公開のヴィデオスルー。

5人の大学生が訪れたキャンプ場。付近で酒屋を経営するサイモンとスタンレーという双子(グローヴァー2役)が5人の命を次々奪って行く・・・って森の中で若い男女が逃げ回る今さらなお話で、「13日の金曜日」シリーズやら「クライモリ」なんかと大差ない。違いはといえば、殺人鬼が森の中に様々なトラップを仕掛けており、大袈裟な殺人装置(ツルハシが飛んできたり、刃物が装着された丸太が回転しながら降りてきたりする)が登場すること。双子の殺人鬼の過去に重点が置かれていること、くらいか。しかし殺人鬼の狂気を描けば描くほど映画的な恐怖からは遠ざかるという旧態依然とした問題に嵌まっており、ホラー映画としてのレベルはかなり低い。

13日の金曜日・完結編」では殺される側だった我らがクリスピン・グローヴァー。今回は殺す側に回って大ハッスル。双子2役を巧みに演じ分け・・・てないなあ、あんまり。狂気の表現も「誰か止めろよ」と言いたくなるほどのオーバーアクトで、大学生役の5人組のナチュラルな演技とあまりに違いすぎて浮きまくり。残念ながら、グローヴァーの魅力を伝え切れる役柄ではなかったようだ。その点からすると、リメイク版「ウィラード」は被害者であり加害者である役どころで、復讐に暗い情熱を燃やしながら鼠を飼育する男の役ではグローヴァーの魅力が存分に発揮されていたように思う。

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