ジョン・カーペンター監督のカルト・クラシックをロブ・ゾンビ監督がリメイクした「ハロウィン」HALLOWEEN(2007年)見る。
アメリカの田舎町に暮らすマイケル・マイヤーズ少年(ダエグ・フェアーク)。両親の仲は悪く、学校ではいじめられ、孤独な毎日を送っていた。そしてハロウィンの夜、ついにマイケルは幼い妹を残して一家を惨殺、精神病院に収監され、ドクター・ルーミス(マルコム・マクドウェル)の治療を受け始める。それから17年後、巨漢に成長したマイケルは病院を脱走し、殺人を繰り返しながら、妹の元へと向かうのだが・・・。
ロブ・ゾンビ監督のこれまでの作品を振り返るならば、「マーダー・ライドショー」はまるで「悪魔のいけにえ2」の再現、「デビルズ・リジェクト」は「ナチュラル・ボーン・キラーズ」の本来あるべき姿を示し、「ナチ親衛隊の狼女」(「グラインドハウス」収録のフェイク予告編)は即トラッシュマウンテン・レーベルから発売されそうな映像を提示、とマニアを裏切らない仕事ぶりであった。今回は「ハロウィン」のリメイクということで、実にストレートなスラッシャーものに仕上がっている。これをして地味だ、新鮮味が無いと批判する向きもあろうが、いやいや俺は好きだったなあ。転がる死体一つ流れる血のどす黒い色彩一つとっても正統的なホラー演出を心得た撮り方だし、後半のたたみかけるようなアップテンポの演出もまた面白い。ロブ・ゾンビの溢れんばかりのホラー映画愛が横溢した好篇だと思う。
チョイ役まで含めてキャスティングがマニアックだ。カーペンター版でドナルド・プレザンスが演じたドクター・ルーミスはマルコム・マクドウェル。マイケルの義父はウィリアム・フォーサイス(「デビルズ・リジェクト」)、保安官はブラッド・ドゥーリフ(「スポンティニアス・コンバッション」)、看護婦はシビル・ダニング(「ハウリング2」)、精神病院の経営者はウド・キア(「悪魔のはらわた」)、看守はダニー・トレホ、墓守役はビル・モーズリー(「悪魔のいけにえ2」)、マイケルの犠牲となるトラック運転手ビッグ・ジョー・グリズリーはケン・フォーリー(「ゾンビ」)、その他ディー・ウォーレス(「クジョー」)、シド・ヘイグ(「スパイダー・ベイビー」)、クリント・ハワード(「デビル・スピーク」)、リチャード・リンチ(「ディーモン/悪魔の受精卵」)など、ホラー映画出演歴のある錚々たる顔ぶれが揃っている。彼らは映画に何ともいえないBクラスならではの荒みというか凄みを吹き込んでいる。マイケルの母親役は監督の女房シェリ・ムーン・ゾンビ。しっかりした演技力といい女っぷりを見せてくれる。
リメイク版の最重要ポイントは、マイケルの少年時代を描いていることだろう。マイケルは絵に描いたようなホワイトトラッシュの出身(母親はストリッパー、義父は酒びたりのろくでなし、姉貴はあばずれ)で、学校ではいじめられっこで・・・という。殺人鬼の生い立ちを描けば描くほど怖くなくなるというホラー映画のタブーがあり、この映画は正にそのタブーを犯している訳だ。しかし監督の主眼は正にこの前半部分にあったような気がする。というのも映画はこのマイケルに肩入れして描いているように見えるからだ。マイケルの少年時代を演じた子役が凄い存在感で、怪物化した後のマイケルを予感させるのも良かった。浮腫んだような頬、パサパサした金髪、空虚な目つき・・・。映画はマイケル少年の暗い欲望と同化し、殴り、刺し、幼い妹を抱きしめるのだ。監督の目線がマイケルに注がれているのが明らかになるのはエンディング。そこに流れるのは幼いマイケルと母親が戯れる様子を映し出すホームムービー(8ミリ!)。母親が自殺する寸前に見ていた映像でもある。今回のリメイク版がこのテのありがちで単細胞なスラッシャー・ムービーと一線を画しているのは、監督が独自の視点でマイケルに愛情を注いで描いているからではないかと思う。今回もまたゾンビの名に恥じない立派な仕事ぶりだったと言えよう。
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