ムーンライダーズ

2009年11月13日 (金)

「Le Grand」(かしぶち哲郎)

 急に冷え込んできた。張り詰めた冷たい空気は、すでに冬のそれである。何だか今年は「季節の変わり目」が無かったような気がする。徐々に冬らしくなっていくのではなくて、ある日突然次の季節に移行してしまったというか。仙台がそうだったのか、それともオレが感じられなかっただけなのか・・・。それはさておき。

 物憂げな冬の季節に相応しいアルバムが届いた。ムーンライダーズのドラマー、かしぶち哲郎の16年ぶりのソロアルバム「Le Grand」だ。初回限定盤はボーナスCDと手書き風の詩集を加えてのスペシャルパッケージ。もちろん、こちらで買いました。

 帯に添えられたコピーは「音楽という名の映画、映画という名の音楽」。ただし、ここでいう「映画」とは決して現代の映画ではない。最近の映画はフランス映画だろうが邦画だろうが貧乏臭いのが多すぎて、こんなに光り輝くロマンティックな世界は存在していないもんなあ。

 お得意のデュエット(お相手はクレモンティーヌ、石川セリ)を含む、これぞかしぶちワールド、ゴージャスな大人の音楽である。個人的にはアレンジがあまりにキラキラとまぶしすぎてついていけないところもあるが・・・。先述の通り、あり得ないくらいロマンティックなラヴソングが続く前半。決して上手いとは思わないが、何とも色気があるかしぶち氏のヴォーカルが堪能出来る。ブライアン・フェリーのようなねっとりとした色気とはまた違った、もっと陰りのある、男のため息まじりの独白のような。
 終盤、初期ムーンライダーズの名曲「ハバロフスクを訪ねて」再演から続く2曲が素晴らしい。スケールが大きくて、これぞ正に「映画という名の音楽」ではないか。

 個人的なベストトラックはM4「ドレス一枚と愛ひとつ」。昨年仙台で行われたライヴでも披露されていたボサノヴァのカヴァー曲。かしぶち氏の日本語詞が良いし、味わい深いヴォーカルが堪能できる。

 ボーナスディスクは、1967~1970年(16~19歳)頃の自宅録音音源集。陰りのあるロマンティックな歌を弾き語るという基本的なスタンスは全く変わっていない。後にムーンライダーズで録音される曲の原曲がいくつか収録されているのも興味深い。このボーナスCD、そして手書き風詩集を見ると、かしぶち氏の特殊性が改めて感じられる。一体何を聴いて育てば、こういう16歳が出来上がるんだろうね。


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2009年11月 1日 (日)

「シーシック・セイラーズ登場!」(鈴木慶一)

 鈴木慶一のソロアルバム「シーシック・セイラーズ登場!」。前作「ヘイト船長とラヴ航海士」に続いてプロデュースは曽我部恵一。前作はWケイイチ2人だけによるレコーディングだったようだが、今回は新バンド、シーシック・セイラーズによるレコーディングが行われている。バンド編成になったからといって音が分厚くなったとかそういうことはなくて、ルーズな、リラックスした心地良い音作りがなされている。

 前作では、50代となった慶一の心境を反映した幾分シリアスな世界観が全編を覆っていた。今回は何とロック・オペラ! コンセプト重視のアルバム作りはムーンライダーズでもお馴染みだけど、今回はそれほど厳密なものではない。解ったようで何が何だかさっぱり理解不能な設定(下記参照)で、彼の楽曲のバラエティと、多分に妄想が入り込んだ物語世界が溢れ出ている感じ。雰囲気としてはヴァン・ダイク・パークスの初期3枚に近いような感じかな。何といっても慶一本来のユーモラスな感覚が復活しているのが嬉しいなあ。

 時は5001年の東京。大部分が水没した世界。残された陸地は謎の大企業Yノーズ社に牛耳られている。不戦戦艦シーシック号から発信する海賊放送。ヘイト船長とラヴ航海士は、仲間のオーシャン・チャイルド、ピースtheK、ヴォヤージ・マンらとシック・パイレーツというバンドを結成。元格闘王バーン・ベノワの経営するレストラン、シック・セイラーで演奏をしている。いつかラジオに出る事を夢見ながら・・・。

 個人的なベストトラックはM12「悲しきタンバリン」と、M18「FMとAMの間のゴースト」。「悲しきタンバリン」は慶一の孤独感滲む詩と美メロが見事にマッチした名曲中の名曲。これはもうスタンダードといってもよかろう。一方「FMとAMの間のゴースト」はキンキーな慶一が丸出しになった1曲。すっとんきょうなヴォーカルと演奏が楽しい。歌詞の切れ味も素晴らしい。

 ムーンライダーズ、リリースラッシュの2009年。次はかしぶち哲郎氏のソロアルバムだな。楽しみ。

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2009年10月30日 (金)

「「さよなら」の女たち」O.S.T.(かしぶち哲郎)

 先日、仙台の某中古屋で「「さよなら」の女たち」(1987年、大森一樹監督)のサントラを発見。音楽はムーンライダーズのかしぶち哲郎。封切当時見て結構好きな映画だったこともあり、迷わず購入。

 監督からの要望はフランソワ・ド・ルーベ(「ラムの大通り」)だったという。聴いてみたら、かしぶち氏らしいキラキラしたお洒落な世界が展開しており、ラグタイム調の曲などなるほどド・ルーベかも。かしぶち氏のヴォーカル曲(しかもフランス語)も入ってて楽しめる。

 80年代半ば、大森一樹監督は自主映画出身の出世頭として、メジャーフィールドで娯楽映画を連発していた。吉川晃司三部作と斉藤由貴三部作はどれも好きだった。斉藤由貴のコメディエンヌとしての魅力を引き出した三部作の中では、本作「「さよなら」の女たち」が一番良い出来だったような記憶がある。見直してみたいなあ。

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2009年10月24日 (土)

「MOONRIDERS IN SEARCH OF LOST TIME Vol.1」(ムーンライダーズ)

 数年おきにやってくるムーンライダーズのリリースラッシュ。新譜に続いては、デモ音源を集めた「MOONRIDERS IN SEARCH OF LOST TIME Vol.1」が登場。これは結成20周年の時に記念アイテムとして発表された「Damn! MOONRIDERS」(CD-ROMとライブ音源集、デモ音源集の3枚組)に収録されたデモトラック集を再編集したもの。そちらももちろん持ってるけれど、新たに2曲が追加されているというので買ってしまいました。(←マニアの受難)

 後に完成版としてアルバムに収録された曲の原型、アルバムから外れた曲、いずれも興味深い音源ばかりでマニアにはたまらんものだ。アルバムに収録されたものとは全く違うアレンジの「30」「くれない埠頭」、アルバムから外れた曲では「象のような女」「先生パー」というナゾの2曲が面白い。

 収録されている中では「I am Robot Santa Claus」が最高に好きだ。先述の20周年記念CD-ROMを出す時特別にレコーディングしたという曲で、メンバー6人が各8小節ずつしりとりのように詩・曲・アレンジ・ヴォーカルを回すという趣向。各メンバーの個性がくっきり出ているし、素晴らしくキュートな曲で大好き。「廃棄されて子供に見られながら朽ち果てていくロボットのサンタクロース」の歌だよ。

 今回追加収録された1曲は、「Pissin' till I die」。99年にネットで無料配信された曲で、後に歌詞とアレンジを変更して「Kissin' you till I die」としてシングル発売された。ライダーズにしては珍しいメロウなヒップホップ調の曲で、慶一のオヤジ臭いラップが聞ける。個人的には「Kissin'」よりもこちらの「Pissin'」の方が好きだ。露骨にエロティックな歌詞がまた何ともいえずやさぐれてていいなあ。やまだないとの漫画(彼女もライダーズのファンなんだよね)思い出したりして。

 追加されたもう1曲は「ゆうがたフレンド」のデモヴァージョン。アレンジはほぼシングル曲と一緒で、若干アコースティックな感じ。白井良明がヴォーカルを担当している。この曲はライダーズ長年の盟友といえる糸井重里が作詞を担当しており、NHK「みんなのうた」でもやりそうな(けど絶対にやりそうにない)、友情を歌ったオーソドックスな世界が新鮮。これ、聴いててうっかり泣いちゃったよ。だって、こんな歌詞だぜ。

「何ひとつ取り柄もない 力もない 知恵もない
ともだちがいてくれる 葬式まで たぶん来てくれる」

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2009年10月18日 (日)

「Tokyo 7」(ムーンライダーズ)

 我が最愛のロックバンド、ムーンライダーズ。デビュー33年目のニューアルバムが届いた。タイトルは「Tokyo 7」。あれ、ライダーズのメンバーって6人じゃなかったっけ?と思ってジャケット裏を見ると・・・。この辺の洒落っ気が彼ららしくてニヤリとさせられる。

 2000年以降のライダーズのアルバムは、1曲1曲に詰め込まれた情報量が異様に多くて、聴き応えはあるけれどアルバム通して聴くのはちょっと疲れるなあというのが正直な感想だった。もちろん、その混沌とした感じも大好きなのだけれど。50代に入ったメンバーの年齢が関係しているのだろうが、諦観や虚無に陥るような生々しい歌詞が増えてきたように思えるのも辛かった。(繰り返しになるけれど、もちろんその世界観も好きなのだけども・・・)

 ところが、今回の「Tokyo 7」は一味もふた味も違う。

 1曲目の「タブラ・ラサ when rock was young」、このイントロを聴いただけでいつもと違うことが分かる。何だ?このテンションの高さは。
 今回のアルバムはほどよく力が抜けているというか、1曲1曲の輪郭がクッキリしていて聴きやすい。もはやアラウンド還暦な男たちが出してるとは思えない元気いっぱいのサウンドには驚かされる。歌詞も(彼らにしては)ストレートで分かりやすいものが多い。先月半ばに購入して以来、もうこればっかり聴いている。

 ここ最近、個人的に調子が悪くてどうしようもない。ちょっと気を抜くと意識を失いそうになるくらい辛い毎日だけれど、「Tokyo 7」を聴いていると、意識が急速に覚醒して、色を失っていた眼前の景色が鮮やかにぐーっと立ち上がってくるようだ。

 アルバムに収録された全13曲、どれも素晴らしい。特に好きなのは7曲目「ケンタウルスの海」、9曲目「夕暮れのUFO、明け方のJET、真昼のバタフライ」、11曲目の「パラダイスあたりの信号で」。

 個人的なベストトラックは「ケンタウルスの海」。作詞・鈴木博文、作曲・武川雅寛のコンビ作。「自由に生きたからって 自由に死ねるわけじゃない」「自由に愛したからって 愛されるとは限らない」という博文氏らしい苦ああああい歌詞に続いて、「波を打ち抜く弓矢は 浮かぶもくずとなって 散って 飛んだ水が 星になる」と信じられないくらいドラマティックなサビが続く。泣いた。これは本当に特別な1曲だ。

 「パラダイスあたりの信号で」は危険な曲だ。作詞・作曲は鈴木慶一。聴いていたら、視界の下方から人生のエンディングクレジットがせり上がってくるのを妄想した。「赤く点滅する 次の自分が見たい」だもんなあ。後半曲調が変わり、ライダーズお得意の男性コーラスで「パラダイスあたりの信号で・・・」と繰り返すのもヤバい。ちなみに、この曲のタイトルを聞いて映画マニアなら川島雄三の「洲崎パラダイス 赤信号」を連想しない訳にはいかないだろう。

 「Tokyo 7」はライダーズのバンドとしての強固な意志を感じる。「僕らは 溶けない 塊」(「タブラ・ラサ」)という頼もしい歌詞が嬉しい。最終曲の「6つの来し方行く末」はメンバー6人がヴォーカルを歌い継ぐ美しい曲。そこにこんな歌詞がある。

「春も夏も秋冬も いつも僕たちは 仕事をしてきた それでいいんだろうと」

33年目の男たちの自負が感じられるではないか。そして、正直にこんなことを言い添えるのも忘れていない。

「歳を数えたら ここにいるのが解ることもたくさんある 解らないことも 消えて増えていくよ」 と。

ライダーズのファンで本当に良かった。これからもずっとついていきます。そして、願わくば「Tokyo 7」がヒットしますように。


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2009年4月 3日 (金)

「ライブ・アット・広島見真講堂 1980.10.11」(ムーンライダーズ)

 我が最愛のロックバンド、ムーンライダーズ。数あるオリジナルアルバムの中で最も好きな3枚を挙げよと言われたら、「カメラ=万年筆」(1980年)、「アマチュア・アカデミー」(1984年)、もう1枚はその日の気分によって選ぶという感じ。ちなみに今日の気分では「Don’t Trust Over Thirty」(1986年)か。♪月にでも行ってみたい そんな気がする四十代 できれば何にもしたくない 金さえあればの四十代」「突然、頭がだるくなり 目を閉じた。真っ暗闇で気持ち良い・・・」(「だるい人」)てなもんで。それはさておき。

 2005年から始まったアーカイヴ・シリーズの第4弾「ライブ・アット・広島見真講堂 1980.10.11」が出た。今回は「カメラ=万年筆」発表時のツアーからの発掘音源を収録したもので、「アルファビル」「欲望」「彼女について知っている二、三の事柄」などと映画のタイトルからインスピレーションを得た曲がずらりと並んでいる。当時のライダーズは同時代的な流れとしてパンク・ニューウェーヴに最も接近していた頃。このライヴでも演奏に異様なほどスピード感がある。かしぶち氏のドラミング、博文氏のベースもやたら早い。良明氏のギターはニューウェーヴらしくペキペキ鳴ってるし、岡田氏のキーボードがいつになく自己主張している。とにかくカッコいい。まだ20代だった頃のライダーズの強烈なパワーが伝わってくる好ライヴ盤といえよう。

 クライマックスには慶一の「イタリアン・ツイスト!」というMCで「太陽の下の18才」(エンニオ・モリコーネのカヴァー)、「水の中のナイフ」、「24000のキッス」(イタリアのリトル・トニーという歌手のカヴァー)のツイスト3連発。歌謡曲ともロックともつかぬ妙なミクスチャー感覚がインパクト絶大。この辺のねじれ具合がいかにもライダーズらしくて楽しい。

 ライヴの最後の曲は「24時間の情事」。慶一氏がMCでちゃんと「ヒロシマ・モナムール!」と原題で紹介してるのにはグっときた。いやあカッコ良い。

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2009年3月19日 (木)

「Tokyo Navi」(ムーンライダーズ)

 2009年に入ってムーンライダーズが活動を活発化させており、長年のファンとしては嬉しい限り。今年は1月から新宿LOFTで3ヶ月連続のマンスリーライヴ、4月には東京・大阪・名古屋でライヴを敢行。さらに昨年12月から6ヶ月に渡って毎月ネット配信で新曲を発表するという企画を行っている。新曲は各メンバーが1曲ずつ担当し、12月「Tokyo, Round and Round」(岡田徹)、1月「恋はアマリリス」(白井良明)、2月「You & Us」(鈴木慶一)ときて、今月はくじらこと武川雅寛氏による「Tokyo Navi」。タイトル通り、彼女と東京をドライヴするというストレートな歌詞で、ムーンライダーズらしかわぬ分かり易い1曲。お得意の男性コーラスから始まって、くじら氏のフィドル、岡田氏のアコーディオン、博文氏のブルースハープが楽しめるポップな曲で嬉しい。この企画はこの後、鈴木博文、かしぶち哲郎と続く。楽しみだ。

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2009年3月10日 (火)

「20世紀少年」(浦沢直樹)

 この一週間くらいかけて浦沢直樹の人気コミック「20世紀少年」(全22巻)、「21世紀少年」(上下巻)をまとめ読み。個人的な感想としては、あれこれ盛り込み過ぎだよこれ。SF的な設定や、社会批判的な要素もあるけれど、結局のところ一番やりたかったのは友情話と音楽の話なのだろうと思う。ならば世界を滅亡させる必要なんかないし、人が死に過ぎだろうというのが正直なところ。

 「20世紀少年」が下敷きにしているのは明らかにキングの長編小説「IT」だ。少年時代の仲良しグループが大人になってから再結集して悪と戦うというストーリー、皆が少年時代を思い出せないという部分までよく似ている。血沸き肉踊る「IT」に比べてどうも感動が薄いのは、登場人物の描き分けや少年時代の描写がかなり紋切り型で薄っぺらいからだと思う。

 何で今さらこれを読もうと思ったかと言えば、映画版を見る為の予習である。以前から大嫌いな堤幸彦の映画を何ゆえ見なければならないのか。しかも3本も。それは、ひとえに白井良明氏(ムーンライダーズのギタリスト)が音楽監督を務めているからである。製作費60億とか言われている超大作の音楽を、ムーンライダーズのメンバーが担当する!この衝撃。原作を読んで分かった通り、音楽の見せ場は全編に存在する。クライマックスに至っては・・・である。そこにどんな楽曲が提供されるのか、表題曲はどのように使われているのか、楽しみだ。何せこの漫画の主人公の名前は「遠藤ケンジ」というのである。原作者だって生半可な音楽ファンではあるまい。その成果はいかに。追って報告したい。

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2008年12月10日 (水)

ムーンライダーズ moonriders Gig /Tokyo,Round and Round 2008(SHIBUYA-AX)

仕事早退して上京。SHIBUYA-AXにて我が最愛のロックバンド、ムーンライダーズのライブmoonriders Gig /Tokyo,Round and Round 2008。先日の大貫妙子コンサートと同様、客層はまたしても高く、会社の上司みたいなおじさんもちらほら。1年ぶりの生ライダーズなんでもうワクワク。

1曲目は何とまあ「コウモリがとぶ頃」!しかもへヴィかつサイケデリックでうねりのある演奏ぶりは気合い充分。20分にも及ぶ演奏からはライダーズが年季の入ったライヴバンドであることを痛感させられる。2曲目は「超C調」、3曲目は「僕は走って灰になる」と、最近のライブでは聴いたことのない曲が続いて嬉しい。

 とある冬の街角で 僕は君に電話した 

 逃げ道なんかないことを 僕は君から教わった

 とある冬の街角で 朝がコートに凍りつく 

 君は駆けても豚だけど 僕は走って灰になる

  (「僕は走って灰になる」)

次は各メンバーがそれぞれヴォーカルを担当しての曲が続く。まずはギターの白井良明氏が「Sweet Bitter Candy」。キーボードの岡田徹氏が「ぼくはタンポポを愛す」。シングルのカップリング曲でマイナーな1曲なんだけど、この曲好きなんだよなあ。ベースの鈴木博文氏が「僕の努力」。これまたマイナーな渋い1曲。バイオリン&トランペットのくじら氏が「最後の木の実」を。そう言えばこれクリスマスソングなのな。ドラムのかしぶち哲郎氏のコーナーが無かったのが残念!

 ジングルジャングル鳴り響く 空っぽの部屋の暖炉には

 僕の幽霊がサンタクロースに変装して待っている

  (「最後の木の実」)

 続いては最新曲が2曲。来月ネット配信される新曲「恋はアマリリス」。随分メロウな曲調で。続いては先日配信されたばかりの「Tokyo, Round & Round」。こっちはいかにもライダーズっぽい人懐っこい感じのロックンロール。続いて06年の傑作アルバム『MOON OVER the ROSEBUD』から「Rosebud Heights」と「Cool Dynamo, Right on」。慶一氏作詞の凄くいい曲。どっちも大好き。

 ここからはラストに向けて演奏はヒートアップ。「Modern Lovers」はスカ調のアレンジで博文氏がヴォーカルを担当。ハンドマイクで歌い、ブルースハープを吹きまくり、ステージはもちろん客席の間を走り回り、ステージに寝転がって歌い、と大活躍。本編ラストは「彼女について知っている二、三の事柄」。

 クローズ・アップ! 見ろよ 俺の手のひら 夜の影染み込んで

 ラブシーンまでに お前の首に 俺の指が輪を作る

  (「彼女について知っている二、三の事柄」)

アンコールはまず「BEATITUDE」。この曲は(ライダーズにしては)ストレートなサウンド&歌詞のメッセージソングで、客席は大盛り上がり。その後はくじら氏のヴァイオリンに合わせて、客席に下りた慶一氏らがお客さんと輪になってぐるぐる走り回る。次は「シリコンボーイ」~「Video Boy」~「火の玉ボーイ」の「ボーイ」3連発メドレー。ラストはポップなクリスマスソング「スプーン一杯のクリスマス」で締め括る。ああ、もっと聴いていたかったよ。

 戦うなら 快楽の邪魔する奴と 

 祈るなら 胸の中の自由さに

 夢の数だけなら 負けはしない 

 傷の数を数えたら十万億

 届けよ Beatitude カルマにまみれて  (「BEATITUDE」)

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2008年12月 3日 (水)

「Tokyo,Round and Round」(ムーンライダーズ)

 いよいよ活動再開のムーンライダーズ。3ヶ月連続で新曲をネット配信するのだという。かつてライダーズは、かなり早い時期(90年代後半)に新曲をネット限定で無料配信するという事を行ったが、その曲がまた「死ぬまで小便し続ける」だの「小便主義」だの困惑させられるような曲だったのを思い出す。まだネット配信が一般的ではなかった頃の実験的な試みであったのだとは思うが、あれには参ったなあ。

 で、今回配信されたTokyo,Round and Round(作詞/鈴木慶一、作曲/岡田徹)は予想以上にポップなナンバーで一安心。日本語のロック黎明期から「東京」で活動してきた生き残りの決意表明にも取れるような歌詞、おもちゃっぽいサウンドが面白い。3月にはニューアルバムが出るらしいので、是非ともこの曲のようなポップ路線で行って欲しい。

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