「Le Grand」(かしぶち哲郎)
急に冷え込んできた。張り詰めた冷たい空気は、すでに冬のそれである。何だか今年は「季節の変わり目」が無かったような気がする。徐々に冬らしくなっていくのではなくて、ある日突然次の季節に移行してしまったというか。仙台がそうだったのか、それともオレが感じられなかっただけなのか・・・。それはさておき。
物憂げな冬の季節に相応しいアルバムが届いた。ムーンライダーズのドラマー、かしぶち哲郎の16年ぶりのソロアルバム「Le Grand」だ。初回限定盤はボーナスCDと手書き風の詩集を加えてのスペシャルパッケージ。もちろん、こちらで買いました。
帯に添えられたコピーは「音楽という名の映画、映画という名の音楽」。ただし、ここでいう「映画」とは決して現代の映画ではない。最近の映画はフランス映画だろうが邦画だろうが貧乏臭いのが多すぎて、こんなに光り輝くロマンティックな世界は存在していないもんなあ。
お得意のデュエット(お相手はクレモンティーヌ、石川セリ)を含む、これぞかしぶちワールド、ゴージャスな大人の音楽である。個人的にはアレンジがあまりにキラキラとまぶしすぎてついていけないところもあるが・・・。先述の通り、あり得ないくらいロマンティックなラヴソングが続く前半。決して上手いとは思わないが、何とも色気があるかしぶち氏のヴォーカルが堪能出来る。ブライアン・フェリーのようなねっとりとした色気とはまた違った、もっと陰りのある、男のため息まじりの独白のような。
終盤、初期ムーンライダーズの名曲「ハバロフスクを訪ねて」再演から続く2曲が素晴らしい。スケールが大きくて、これぞ正に「映画という名の音楽」ではないか。
個人的なベストトラックはM4「ドレス一枚と愛ひとつ」。昨年仙台で行われたライヴでも披露されていたボサノヴァのカヴァー曲。かしぶち氏の日本語詞が良いし、味わい深いヴォーカルが堪能できる。
ボーナスディスクは、1967~1970年(16~19歳)頃の自宅録音音源集。陰りのあるロマンティックな歌を弾き語るという基本的なスタンスは全く変わっていない。後にムーンライダーズで録音される曲の原曲がいくつか収録されているのも興味深い。このボーナスCD、そして手書き風詩集を見ると、かしぶち氏の特殊性が改めて感じられる。一体何を聴いて育てば、こういう16歳が出来上がるんだろうね。
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