サスペンス・ミステリー

2009年11月29日 (日)

「チャイナタウン」(ロマン・ポランスキー)

 ロマン・ポランスキーが多額の保釈金(約4億円とか)を積んで保釈されたらしい。アメリカ当局への身柄引き渡しの件は保留になっているようだ。

 ポランスキー保釈記念に(冗談)、1974年の大傑作「チャイナタウン」を久々に再見。いやあ何度見てもこれは素晴らしい。映画オリジナル脚本の探偵映画としてはベストなのではないかと思う。個人的にはジャック・ニコルソンのベストワークは「カッコーの巣の上で」でも「シャイニング」でもなく、本作で演じた探偵ジェイク・ギテス役だと思っている。

 どうやら例の淫行事件は「チャイナタウン」の成功から発生した人間関係がきっかけのようだ。そんなハリウッド・バビロン的興味がそそられる1作でもある。


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2009年11月16日 (月)

「ファム・ファタール」(ブライアン・デ・パルマ)

 ブライアン・デ・パルマ監督の問題作「ファム・ファタール」(2002年)がBSで放映されたので久々に再見。封切時劇場で見た時は「何じゃこりゃあ」と呆れたものだった。が、後から思い出してみる度に、いい映画だったような気がしてくるという不思議な1本。

 改めて見直してみると、いやあ、やっぱりこれはいい映画ですよ。一見、出来損ないのエロ・サスペンス映画みたい。真面目に見ていると辻褄の合わない場面や唐突すぎる展開が連続して戸惑うこと必至。「ボディ・ダブル」同様に、思いっきり歪んだデ・パルマの脳内世界なんである。しかし優雅なタッチは決して不快ではなく、ヘンさ加減もいい塩梅の味わいとなっているではないか。ここには映画ならではの陶酔感みたいなものがちゃんと感じられる。画面分割が始まったりするとそれだけで嬉しくなったりして。

 一応主人公はアントニオ・バンデラス演じるカメラマンで、物語に関わってそうで実は全く関わってないというこの男の存在は面白い。映画は俯いた彼のストップモーションで終わる。そして今時珍しく、きちんとエンドマークが出るのもいい。エンディングに映し出されるパリの通りをパノラマ的に再現した写真がいかにもデ・パルマらしいフェティッシュな感覚で面白い。

 残念なのは音楽(坂本龍一)かなあ。あれは全然良くないと思う。モリコーネ先生・・・とは言わないまでも、せめてピノ・ドナジオじゃ駄目だったのかなあ。


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2009年3月15日 (日)

「イーグル・アイ」(D・J・カルーソー)

 スピルバーグ提供、新鋭D・J・カルーソー監督によるサスペンス・アクション「イーグル・アイ」EAGLE EYE見る。トニー・スコットの「エネミー・オブ・アメリカ」とヒッチコックの「北北西に進路を取れ」と「知りすぎていた男」を混ぜ合わせてSF風味を塗したみたいな感じのお話。国家のテロ対策や監視社会への警鐘という現代的な題材も突っ込み不足で、結局一番の見せ場はカークラッシュだったりする大味な映画であった。

 映画の中には監視衛星の映像、町中の監視カメラの映像、携帯の動画、といった様々な映像が挿入される。その無防備な挿入ぶりには、この映画っていったい誰の視点で語られてるんだとイライラさせられた。ヒッチコック・タッチを狙った巻き込まれ型のサスペンスならば、当然視点を主人公に据えて描かれるべきであろう。終盤で実はその映像は○○の視点でした、と明かされるに至っては大風呂敷すぎて脱力させられる。同様の題材でヴェンダースが思いっきり空振った「エンド・オブ・バイオレンス」と2本立てで見ると、色んな意味で興味深いかもだ。

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2009年3月 8日 (日)

「チェンジリング」(クリント・イーストウッド)

病み上がりの日曜日、教会にでも行くような気持ちで映画館へ行って来た。

仙台フォーラムにてクリント・イーストウッド監督「チェンジリング」見る。

不幸のつるべ打ちに遭いながら、全くぶれることの無いヒロインの生き様。

お話は最近のイーストウッドらしい真っ暗な展開で、激しく打ちのめされる。

演出も、撮影も、演技も、語り口の緩急も、全てにおいて格が違う感じであった。

やっぱりイーストウッドは凄い・・・。これまで何度そう呟いてきたことだろう。

今年は監督・主演作「グラントリノ」も控えている。今度は久々スクリーンでイーストウッドの勇姿を拝めるのだ。楽しみだ。

映画を見終えて劇場の外に出たら、体調不良でふらふらした。

目が疲れて頭がガンガンするし、余程力が入ってたのだろうか、肩と背中がガッチガチに凝っていた。

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2009年1月18日 (日)

「インファナル・アフェアⅢ 終極無間」(アンドリュー・ラウ、アラン・マック)

 三部作完結篇、「インファナル・アフェアⅢ 終極無間」INFERNALAFFAIRS Ⅲ(2003年)見る。一作目で描かれた潜入捜査官ヤン(トニー・レオン)殉職の前後と、警察内部に居残ったラウ(アンディ・ラウ)のその後を描く。

犯罪組織の手先としてヤンやウォン警部などを死に追いやった事を悔やみ、ラウは「善人になりたい」と思う。自分以外に警察内部に潜む犯罪組織の手先を見つけ出そうと奔走するラウ。その前に立ちはだかる保安部のエリート警官ヨン(レオン・ライ)。そこからドラマは二転三転。一作目、二作目の比較的ストレートな作風とは異なって、非常に込み入った展開を見せる。一体どういう決着を着けるのかとハラハラさせられた。結果、「無間地獄」という一作目からのテーマをきちんと貫き通した終わり方に納得。こりゃ暗過ぎると好き嫌いが分かれそうな感じだけど、俺は好きだったなあ。二作目にも登場した墓地に、ずらりと登場人物たちの墓が並ぶという終盤の場面は泣けた。泣けるといえば、ヨンともう一人の潜入捜査官「影」が、殉職したヤンを悼んで再会する場面。場所は一作目で登場したビルの屋上だ。ロングショットになると、まるで咽び泣いたかのような曇天だったのが印象に残った。

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2009年1月16日 (金)

「インファナル・アフェア 無間序曲」(アンドリュー・ラウ、アラン・マック)

 BSで「インファナル・アフェア」三部作を連続放映。今夜は2作目「インファナル・アフェア 無間序曲」 INFERNAL AFFAIRS Ⅱ。前作の前日談に当たり、警察と犯罪組織双方にスパイとして送り込まれた若い二人を描く。

警察学校に送り込まれたラウ(エディソン・チャン、後のアンディ・ラウ)、犯罪組織に潜入したヤン(ショーン・ユー、後のトニー・レオン)の若い二人が主人公なのだが、実際にはウォン警部(アンソニー・ウォン)と組織の小ボス・サム(エリック・ツァン)が主役と言ってもいい。アンソニー・ウォンとエリック・ツァン、二人のオヤジが思いっきりイイ顔を披露してくれるのですっかり嬉しくなった。脇にはフランシス・ンも出てるし。渋いオヤジの魅力を堪能できるのは犯罪映画ならでは醍醐味だ。

監督は前作に引き続きアンドリュー・ラウとアラン・マック。人間関係が肝なので前作を見ていないと解りにくいところがあり、単品として見るには苦しいけれど、これはこれで面白かった。アクションの見せ場よりもキャラクターの情感を優先した丁寧な演出のタッチはとても好ましい。1997年の中国返還に揺れる香港が物語の背景にあり、要所要所にドラマとして織り込まれているのも良かった。だだっ広い空間(前作ではビルの屋上、今回は終盤の墓地)に二人の男が対峙するという構図が実に様になってる。

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2009年1月11日 (日)

「インファナル・アフェア」(アンドリュー・ラウ、アラン・マック)

TVで「インファナル・アフェア」 無間道 INFERNAL AFFAIRS (2002)見る。封切時に劇場で観て以来久々に再見したが、いやあ、やっぱりいい映画であった。

 潜入捜査官として犯罪組織に潜り込んだ男(トニー・レオン)と、警官として警察内部に入り込んだ犯罪組織の男(アンディ・ラウ)。本当の自分を隠し危険の中で暮らす2人の男が、やがて対決の時を迎える・・・というサスペンス映画。

これまで香港映画に対して抱いていたイメージは、「勢いはあるが泥臭い」というのものであった。香港時代のジョン・ウー作品など大好きだけど、その過剰なまでの暑苦しさは洗練とは程遠いものである。劇場で「インファナル・アフェア」を見た時は、「ついに香港ノワールもここまできたか」と深く感動を覚えた。お話の面白さでぐいぐい引っ張り、演出はスマート、かつ従来の香港映画らしい熱さも忘れていない。そして何よりここにはスターの輝きがある。トニー・レオンとアンディ・ラウ、香港を代表する2大スターの何ともいえない色気は素晴らしい。ハリウッド製アクションとは一味も二味も違う結末には男泣き必至。個人的に「潜入捜査官もの」に弱いので、トニー・レオンを待ち受ける運命には胸を打たれた。

公開から数年後、本作はハリウッドでリメイクされた。マーティン・スコセッシ監督「ディパーテッド」だ。あろうことかマット・デイモンとレオナルド・デカプリオという童顔コンビが主演なもんで、主人公の魅力はオリジナル版のトニー・レオンとアンディ・ラウには遠く及ばずといったところであった。それはさておき、映画としてはスコセッシお得意のドライなタッチの犯罪映画として充分に楽しめた。今回改めてオリジナル版を見直してみると、こうも違うかと驚かされる。お話は全く同じなのに、映画の手触りが全く違う。そればかりか、テーマそのものが全然違うのだ。オリジナル版は原題「無間道」が表すように、「本当の自分を偽って生き延びるのもまた地獄なのだ」というのがテーマ。一方スコセッシ版は、「ディパーテッド」(死者たち)というタイトルそのままに、「裏切り者のネズミには死あるのみ」とばかり死屍累々の非情な世界が展開していた。スコセッシ版もあれはあれで面白かったけど、やはり映画としての艶はオリジナル版の方が上だと思うなあ。

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2008年12月29日 (月)

「イースタン・プロミス」(デヴィッド・クローネンバーグ)

 劇場で見逃して悔しい思いをしていたクローネンバーグの最新作「イースタン・プロミス」2007年)をようやくチェック。

  舞台はロンドン。助産婦アンナ(ナオミ・ワッツ)は、出産後息を引き取ったロシア人少女の日記を手に入れる。残された赤ん坊の家族を探そうと調査を進める内に、ロシアン・マフィアが暗躍するロンドンのダークサイドに巻き込まれていく・・・。

 ピーター・サシツキーによるひんやりとした撮影、ハワード・ショアの不穏な音楽。低体温な映像の手触りはまごうことなきクローネンバーグなんだが、いつになく端正な演出には驚かされた。「ビデオドロームに死を!」とかやってた監督と同じとは思えない正統的で肌理細やかな演出ぶり。ロンドンの裏社会とロシアン・マフィアの生態をリアルに描いて、正統派のギャング(というかヤクザ)映画としても見応えたっぷりだ。要所要所に繰り出される残酷描写の鮮やかさには惚れ惚れ。拳銃はほとんど出てこなくて、殺人はひたすら刃物という徹底振りも素晴らしい。

 主演は「ヒストリー・オブ・バイオレンス」に続いてクローネンバーグ作品に連続登板のヴィゴ・モーテンセン。ヴィゴはクリストファー・ウォーケン、ジェームズ・ウッズ、ジェレミー・アイアンズ、ピーター・ウェラーらクローネンバーグ作品に主演する俳優の系譜に見事ハマっている。すなわち爬虫類系というか、頬骨が高く皮膚の薄そうな冷たい目をした男たち。本作の見所はズバリ、ヴィゴ・モーテンセンの佇まいであると言い切っても過言ではない位に魅力的である。サウナで刺客に襲われる場面ではチンコ丸出しで激しいアクションを披露。要所で見せる男気、さらにはヴァンサン・カッセルと漂わすホモセクシャルな妖しい雰囲気には誰しも目を奪われるであろう。「インディアンランナー」以来のファンとしては、凄い役者になったもんだなあと嬉しい限り。

 ナオミ・ワッツはもちろん魅力的だけれど、ヴィゴをはじめとした男たちの存在感が際立っている。強大な父権に頭が上がらない二代目ヴァンサン・カッセルの情けなさ、ボスを演じるアーミン・ミューラー=スタールの穏やかな凄み。アンナの伯父を演じるのは、あれ、映画監督のイエジー・スコリモフスキーだよ。

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2008年12月 7日 (日)

「ラスト、コーション」(アン・リー)「緯度0大作戦」(本多猪四郎)

何かちゃんと映画っぽい映画(ってのも変な言い方だが)を見たくて、アン・リー監督「ラスト、コーション」(2007)をレンタル。

第二次大戦中、日本軍占領下の上海が舞台。抗日運動に身を投じたヒロイン(タン・ウェイ)は、日本軍に協力する特務機関のリーダー(トニー・レオン)を暗殺する為に色仕掛けで近づいていくが・・・。

何か違うなあこれ。歴史ドラマなのかサスペンスなのか人間ドラマなのかエロ映画なのかどっちつかずの作りがもったいない。もっと濃厚な映画かと期待してたらちょっと薄味だったなあ。ヒロインの丸顔がどうもお話にそぐわない気がした。美術や音楽などいかにも映画っぽい画面作りは期待通りだったし、何しろご贔屓のトニー・レオン主演なので最後まで楽しめたのではあるが。良かったのはラスト。抗日運動のレジスタンスたちが処刑される(であろう)暗闇の絶望的な深さ、あのクレーンショット故に嫌いになれない映画ではある。

 続けて、往年の東宝特撮映画「緯度0大作戦」(1969)見る。監督本多猪四郎、音楽伊福部昭、特技監督円谷英二とお馴染みのスタッフ。日米合作なのでジョセフ・コットン、宝田明、岡田真澄、リチャード・ジャッケルら日米混合キャスト。ジョセフ・コットンの吹き替えが納谷悟朗というのも楽しい。リチャード・ジャッケルは「特攻大作戦」とかオルドリッチ作品で見かけた顔だ。

 海底に作られた平和な理想郷「緯度0」を守る潜水艦アルファー号の艦長(ジョセフ・コットン)と、理想郷を狙う悪の博士の攻防を描く。本多監督の東宝特撮映画の中では決して出来のいい方ではないと思うが、怪獣映画ではなくてSF映画寄りの作りになっているのが新鮮であった。何故か女医さんがビキニ姿だったり、アダルトテイストも少々。潜水艦の海中戦はトクサツ好きにはこたえられない見せ場であった。まあまあ。

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2008年11月28日 (金)

「カプリコン・1」(ピーター・ハイアムズ)

唐突にピーター・ハイアムズ監督「カプリコン・1」(1977)見る。世界初の有人火星探査船「カプリコン1」が打ち上げられたが、実は・・・というサスペンス・アクション。大昔TVの吹き替え洋画劇場で見て以来の再見。シンプル極まりないお話で、アクション演出も気合入ってるし、今見直しても結構イケる。事件を追う記者がエリオット・グールド、それを助ける女性がカレン・ブラック、という70年代としか言いようのないキャステングにもグッときた。陰謀に巻き込まれて逃げ回る宇宙飛行士はジェームズ・ブローリン。「ジャグラー/ニューヨーク25時」では追いかける側だったなあ、とか、息子のジョッシュ・ブローリンは「ノー・カントリー」で殺し屋から逃げ回ってたっけなあ、とか。脇にはハル・ホルブルック、O・J・シンプソン、テリー・サバラスも出てたりして。

監督は職人ピーター・ハイアムズ。「2010年」以降はしょうもない大作ばっかりという印象だが、「破壊!」とか本作とか70年代にはなかなかいい仕事をしていたのだなと改めて感心した。そして何と言ってもジェリー・ゴールドスミスのスリリングな音楽が印象的。

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